悪環境の中で不動産市場大改革進める習氏の狙い 危機を招かず不動産市場の見直し断行できるか

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全国的な住宅市場見直しは最良の状況下であってもリスクのある作業であり、それはどのような政権にも当てはまる。だが、中国の習近平国家主席は自国経済が減速し、新型コロナウイルスのオミクロン変異株が「ゼロコロナ」政策を脅かす一方、対外関係もますます緊張するタイミングで、これを実行しようとしている。

習改革への一つの疑問

こうした非常に危険な組み合わせが中国金融市場に影響を及ぼす中で、1つの疑問が浮かび上がる。習氏は最終的に何を目指しているのかだ。

中国共産党の不透明性や経済への悪影響を懸念して不動産改革を引っ込めてきた歴史を考えると、その答えを正確に知ることは不可能だ。しかし、中国ウオッチャーは20年余りにわたって経済成長や家計資産、財政収入を大きく後押しする原動力となってきた不動産市場について、これまでとは全く異なった未来像を描き始めている。

上海市内にある習近平国家主席を描いた看板 

その未来像とは住宅の急速な値上がりや不動産大手による債務をてこにした建設ラッシュの時代は過去のものになりそうだということだ。今後の不動産市場は、中国当局が素早く投機熱を抑制し、公益事業のようなリターンしか稼げない国有企業主導の発展という従来に比べて勢いが乏しく、大きく安定した市場になる。

ディストレスト債を専門とする債券ファンド、北京深高私募基金管理の創業パートナー、李凱氏は「過去10年を不動産業界の黄金時代と表現するなら、今ではさび付いた斜陽の時代へと陥りつつある」と話す。

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