日本振興銀行「破綻」の行く末、混乱なきペイオフの不安
経営破綻から3日後の13日、営業を再開する日本振興銀行本店(東京・千代田区)前には、9時の開店を待つ預金者が並んでいた。
先頭で待つ70歳前後の夫婦が本店に来たのは、朝7時前。「預金して1年も経っていないし、まさか破綻するとは…。地元の千葉店は開かないから」と言う。だが、営業を再開した16店舗の中には千葉店も含まれていた。破綻に当惑し、慌てて本店に駆け付けた預金者もいたようだ。
自見庄三郎金融担当相が「途中から経営陣が無理な業容拡大をした」と指摘するように、近年の日本振興銀行は急膨張した。その背景には、逮捕された木村剛元代表が掲げた拡大路線があったとされる。2010年3月末の貸出残高は約4200億円(08年3月末比5倍)、高金利を売りに預金も約5900億円(同4・6倍)まで積み上がった。一方、昨年6月から行われた金融庁の検査は異例の長さとなる。3カ月が一般的といわれる中、この検査は年をまたいで9カ月に及んだ。
結局、複数の法令違反が判明、一部業務停止命令を受けた。態勢見直しの一環として自己査定マニュアルを7月に改訂し、大口融資先を中心に査定をやり直すと、1500億円もの追加引当が発生。これにSFCG(旧商工ファンド)の債権二重譲渡に絡む損失も加わり、3月末時点で274億円の資産超過だったバランスシートは、1800億円超の債務超過へと転落する。すでに経営を存続できる体質ではなかったのだ。
経営陣逮捕を受け、7月に社長に就任した小畠晴喜氏は、社外取締役で取締役会議長も務めた人物。会見で社外取締役としての責任を問われると、「大変申し訳なく思っている。不明を恥じる」と話した。だが、同行内には「長く取締役をやっていて、実態は知っていたはず」と批判する声もある。金融庁や預金保険機構(以下、預保)は今後、刑事・民事の両方から旧経営陣の責任を追及する方針だが、その対象範囲が一つの焦点となりそうだ。