日米地位協定の所管である外務省は、在日アメリカ軍との間で、日本の水際対策に近い「整合的」な措置を取ることを確認していたが、9月以降の方針転換を知らされていなかった。ただし、10月以降に入国直後のアメリカ兵が基地内をマスクなしで自由に歩き回るようになると、日本人基地従業員の組合である全駐労沖縄は、従業員の安全のために基地内でアメリカ兵がマスクを着用するよう繰り返し団交している。
制度ではなく運用の問題
全駐労沖縄の要請は沖縄防衛局にも上がっていた。もし、防衛省が同じ要請を在日アメリカ軍司令部と国防総省に行っていれば、感染状況がここまで悪化することは防げたのではないか。
また、沖縄には外務省の国内唯一の出先機関である沖縄事務所もあり、在沖アメリカ軍の渉外担当部署である基地政務外交部と定期的に連絡を取り合っている。沖縄を歩いていれば、基地の外でもマスクをせず歩いているアメリカ兵が目につくのに、なぜ沖縄事務所は基地政務外交部に状況を確認しなかったのか。
このように、今回、アメリカ軍基地で発生したクラスターとその影響の深刻さは、日米地位協定の制度の問題以上に、運用上の努力の部分が問われなければならない。
日本と同内容の地位協定をアメリカと結んでいる韓国では、感染拡大に伴う同国の新たな水際対策に沿って、在韓アメリカ軍が12月3日から入国直後のアメリカ軍関係者に到着初日と1週間後の2回、PCR検査を受けさせ、それまで容認していた自宅と職場との間の移動も禁じている。これは韓国政府の政治交渉の結果だ。
同盟国間の信頼関係は不断の努力なくしては成り立たない。日本の相手任せの外交では事態が好転するはずもないのである。
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