「来週より当ワクチン接種会場は24時間オープンになります」
12月半ばのある日、バイト先の大規模ワクチン接種会場の朝のミーティングで、上司から衝撃の報告があった。「夜勤も可能な人は、ぜひ勤務協力をお願いします」「国からの指示です!」との上司の言葉に、スタッフから一斉に猛反発が起きた。
「日勤のスタッフだって足りていない!」「夜勤スタッフなど、どこから連れてくるのか!」
実際、こうした言葉を象徴するように、大規模接種会場に大量に設置された個別ブースには、無人ブースがやたらと目立つ。この日も、看護師の配置率は5割前後と少なかった。上司の説明によると、どうやら看護師不足を補うために、ワクチン接種に関わる非医療従事者の業務拡大も併せて行われるという。イギリスのワクチン接種は、なぜここまで迷走しているのだろうか――。
なぜ迷走する?イギリスワクチン接種
新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株が騒がれ始めたのが、2021年12月の初め。その後、イギリスは急激な感染拡大を記録して、12月半ばには連日のように新規感染者が1万人を超えた。
当初は「会社のクリスマスパーティーや、学校でのクリスマス降誕劇などは中止しないように」と、強気な態度を崩さなかったジョンソン首相だったが、ここまで来るとさすがに感染拡大抑制のための決断を迫られた。
2020年3月に新型コロナの感染が急拡大をしたときも国からは指示がなく、初動が遅れた。その結果、感染によって大勢の死者を出し、首相が批判を浴びたことは記憶に新しい。その苦い経験もあってか、12月12日、やっと「2021年12月末までに18歳以上の国民にブースター接種を終えるように」との指示がジョンソン首相から出された。当初の予定を1カ月早めたことになる。
イギリスでは連日、新規感染が1万人を超えているが、重篤化による入院や死亡するケースは昨年の1~2割程度。これにはワクチン接種との関係が大きく指摘されていることから、ジョンソン首相にとってブースター接種の早期完了は、最優先項目だっだ。
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