現在、イギリスの医療において最も懸念されているのは、病床数やICUの人工呼吸器の数ではなく、スタッフ不足だ。国もこの問題を解決する一環として、コロナ感染した場合の自主隔離の日数を10日間から7日間に減らした。それでも、スタッフ不足は今後もしばらくは続く見込みだ。
そんななかで、次に出された施策は「非医療従事者の業務拡大」だった。
ワクチン接種が開始された当初から、イギリスでは非医療従事者がワクチンを接種する行為を認めていた。大規模ワクチン接種会場では予約者の問診、ワクチンの希釈と充填、注射と、完全分業制を取っている。充填はワクチンを正しく計量してシリンジに詰める作業、希釈はファイザーのワクチンを生理食塩液で薄める作業だ。このうち非医療従事者が担当するのが注射で、残りの業務は正看護師が担当する。
ところが、スタッフ不足になると、正看護師の監視のもとでという条件付きで、非医療従事者にワクチンの希釈と充填を認めたのだ。日本では薬剤師が担っている業務であることを考慮すれば、どれだけ責任の重い業務か想像してもらえるだろう。
正看護師は、今まで通り希釈と充填をするだけでなく、非医療従事者の監視までする業務が加わった。その結果、仕事量は倍になり、責任も伴うようになった(もちろん、注射、希釈、充填とも非医療従事者とはいえ、学科と実技の研修を受け、試験に合格した人に限られる)。
接種会場ごとに接種成績を発表する
おまけに、より高い効率を求められた各大規模接種会場では、パフォーマンスが数値化されて公表され、同一地域内で「成績発表」まで行われるようになった。ふと、自分たちは医療従事者というよりも、数字を常に意識するビジネスパーソンになった気分になる。
こうした、いわば「背水の陣」で迎えた年末だったが、大方の予想通りに年内にブースター接種を終えることはできなかった(ただ、これにはスタッフ側の問題だけではなく、来場者がコロナ感染したという理由で予約が延期になったなどのケースもあった)。
バイトのシフトを見る限り、1月いっぱいは拡大体制でやっていくようで、大量のシフト依頼が来ている。感染が収束する気配を見せないイギリスだが、スタッフの賢明な働きによる1月のワクチン接種状況が、その後の感染率と重症化率に大きな影響を与えることはいうまでもないだろう。
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