ボディビル世界王者が指南「才能開花」の3条件 素質以上に大事な「とことんハマる性分」

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ただし、競技となるとまた話は別。自分が満足いく身体に仕上げても、審査員の目にどう映るか次第で順位が決まるからです。どのような身体が評価されるのか。時代に応じたムーブメントも存在するため、トップを狙うためには筋肉を育て上げる過程に他者の視点を入れていく必要があります。つまり、他者評価をうまく勝ち取ることに自己満足を当てはめていければ、競技としてはやりやすいと言えるでしょう。

しかし、それは夢の源であるはずの自分の美意識を曲げることにもなりかねませんし、そもそも審査員は機械ではなく人間ですから、競り合っている場合の判断が感情に左右されることもゼロではないはず。そう考えていくと、勝ち負けだけにとらわれてしまうのは、ボディビルダーとしての幸せをつかみ損ねているように思えてきます。

さて、自分はどうだったのかと言うと……満足したら終わり、という一種の強迫観念にとらわれていた時間が長かったように思います。優勝した瞬間は、喜びと安堵に満たされるのだけれども、余韻を楽しむことはなく、すぐに次のコンテストのほうを向いていました。

当時は、そうあることが自分のハングリーさのあらわれであり、トッププロである所以であり、現役であり続ける秘訣だとも考えていました。だから、それはそれとして満足していると思っていたし、実際に楽しみながら10年間、過ごしてきたわけです。

が、一線を退く決意をした今、もっと楽しく過ごせたはずと思います。

目標設定はできるだけデカく、視野は広く

目標を高く設定することは、自分の可能性を無限に広げるうえでとても大切なこと。ボディビルで言えば、世界の頂点である「ミスターオリンピア」の称号を得ることを夢に掲げることで、毎日の努力を積み重ねることができます。

でも、その先で実際にミスターオリンピアになれなかったとしたら、すべては水の泡なのでしょうか? かく言う私もオリンピア優勝を夢見てきましたが、叶えることはできませんでした。

けれども、日本人として初めてオリンピア出場にたどり着きましたし、トップ10入りも果たしました。同等に素晴らしい大会である「アーノルドクラシック212」をはじめ、いくつかの大会でトップに立つ経験もしました。そのような活躍を見て、熱心に応援してくださるボディビルファンも多く、数多くの企業とモデル・スポンサー契約を結んできました。 

目標に対して強い想いがあると視野が狭くなりがちですが、実際の世界は広いのです。そう考えると積み重ねに無駄なことは一つもないし、方向性を間違わなければ努力は必ずどこかで実を結ぶということ。だから、夢に向かってひた走るその道のりに目を向けると、たくさんの幸せがすでにあることに気づかされます。

他者評価に振り回されそうになったとき、支えになるのは、やはりたくさんの幸せをすでに得てきていることに対する自己満足なのです。

もっとデカく、もっと強く、もっと迫力のある身体に─と、自身の未完成を焦ったり憂うれえたりするより「よくここまでやってきた」と、これまでの頑張りと今のポジションを認めることが、そこから先、続けていくためにも、伸びていくためにも大切です。

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