「肉を食べまくる老人」ほど幸せで長生きする理由 食べまくってエベレストに登頂した80歳も

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歳をとると意欲レベルが低下してくる理由にはいくつかありますが、そのひとつが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの減少です。セロトニンは別名「幸せ物質」とも言われ、人に幸福感をもたらすものです。何気ない瞬間に「ああ、幸せだなあ」と感じるときがありますが、そのような感情をもたらす物質です。

このセロトニンが減少してくると、日々の幸福感は薄れ、はつらつとした感情や若々しさ、活動する意欲が低下してしまいます。気分が沈んだり、イライラしたり、感情が不安定になり、うつ病のリスクも高まってきます。

このセロトニンは年齢とともに次第に減少していくので、高齢になればなるほど、意欲も低下し、うつ病になる人も増えるのです。

肉がセロトニンの生成を促進する

しかし、セロトニンの減少には、高齢になっても、生活習慣を改善することで対抗することができます。その最たるものが、肉を食べることです。セロトニンの材料となるのがトリプトファンというアミノ酸ですが、それが多く含まれているのが肉なのです。肉を積極的にとることで、セロトニンの生成が促進され、意欲低下の抑止に働くのです。

また、肉には、コレステロールもたくさん含まれています。コレステロールは動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクになるという理由から悪者として見られていますが、日本の高齢者にとっては必ずしも忌避すべきものではありません。

心疾患が死因のトップであるアメリカであれば、コレステロールが悪者とみられるのもわかりますが、日本では心筋梗塞の10倍の人ががんで亡くなるという疾病構造の違いがあり、心疾患で亡くなる人はOECD諸国のなかでも格段に少ないのです。動脈硬化を気にするよりも、コレステロールを減らすことによってもたらされる男性ホルモンの減少のほうを恐れるべきです。

コレステロールは男性ホルモンの原料になります。そのため、コレステロール値を薬で抑制することで、EDになることはよくあることです。男性ホルモンのなかでも特にテストステロンは「意欲」と関係しています。性機能の面だけでなく、他者への関心や集中力などを司っています。男性ホルモンが減少すると、活動意欲が低下して、元気のない老人になってしまうのです。ついでに言うと、記憶力も低下します。

しかし、肉を食べ、コレステロールをよくとっていれば、男性ホルモンの低下にも対抗することができます。さらには、セロトニンを脳に運ぶ役割も、コレステロールが果たしていると言われています。つまり、肉を食べることは、セロトニンと男性ホルモンの生成を促進し、人の「意欲」を高め、活動レベルを維持することにたいへん効果的なのです。

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肉が嫌いであったり、体調の問題で食べられないのなら無理をすることもありませんが、健康のために節制して肉食を遠ざけているのであれば、そのようなことは今日からやめることをお勧めします。日本の高齢者の食生活を見ていると、自ら進んで「しょぼくれた老人」になろうとしているように、私には思えてしまいます。

80歳のときに3度目のエベレスト登頂に成功したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは、80歳を過ぎても、500グラムのステーキを平らげているそうです。特殊な例ではありますが、高齢になっても、アスリートとしての能力を維持できている理由のひとつに、肉を食べる習慣があるのだと私は思います。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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