体制一新で臨むイオン、SPA始動も前途多難
1周遅れの本格導入も SPA神話は曲がり角
商品開発面でも新たな形式を導入した。従来はトップバリュが企画、アイクが製造、イオンリテールが販売と、グループ内で機能ごとに分担していた。だがこれでは、企画時点の狙いを販売者が十分に理解できない。そこで導入したのが、ユニクロやポイントなどが採用する一元管理体制、SPA(製造小売業)だ。
これにより、GMSでは初めて追加生産体制を取り入れた。従来は4~6カ月前までにそのシーズンに販売する商品をまとめて発注していたが、それを7割に抑え、残り3割は状況を見て1カ月前をメドに追加発注するという。先行する7割の販売状況を見て在庫を調整できるうえ、流行に合わせ商品を微調整することも可能だ。これでやっと、GMS衣料品売り場が専門店並みの俊敏さを発揮できる下地を整えたといえる。
だが皮肉なことに、今このSPAが曲がり角に立っている。日本企業の衣料品生産基地・中国で、異変が相次いでいるのだ。今年2月、旧正月の休暇後に縫製工場に戻らない出稼ぎ労働者が予想を超えて増え、生産が滞る事態に陥った。その結果、「春物商品がそろわず売り上げを大きく落とした」(ポイント)。工場新設が相次ぎ、現地従業員の奪い合いが過熱、元切り上げなども加わって、今“中国リスク”がSPA先行企業の業績を脅かし始めている。
しまむらでは、供給の安定性確保と品質維持の観点から、逆にリードタイムを長くする動きに出ている。またユニクロや青山商事は、バングラデシュなど、新たな工場開拓に本腰を入れている。
イオンは、アイクの150工場と、資本提携する三菱商事の200超の工場を駆使し、一部で生産が滞っても別工場へ移すことで対応可能、としている。だが店舗網拡大とともに、商品の9割を中国で生産する体制を見直す必要が必ず出てくるだろう。1周遅れのSPA開始は、船出の段階から波が荒立っている。
(鈴木良英 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年9月18日号)
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