権益確保か、新技術か、原料高にもがく鉄鋼メーカー

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経済産業省の小糸正樹・鉄鋼課長は「自社権益の鉱山からの調達率は50%必要だ。足元の円高も武器に権益を取得してほしい」と鼓舞する。日本政府は権益確保への投融資制度を設け、鉱山への鉄道や港など、インフラ面でODAの活用も推進する。ブラジルの「ナミザ鉱山」には、国内高炉5社がそろって出資するなど、遅ればせながら日本でも、官民・民間同士の連携が進みつつある。

新製鉄法で低品位に食指

もう一つ見逃せない動きが、低品位の鉄鉱石でも製鉄が可能な新技術の活用だ。

実は高品位の鉄鉱石が主体のピルバラ地区でも、最近の生産は減少傾向。出物は少なくなっている。そうした中で神戸製鋼所が生み出したのが、年初から米ミネソタ州で商用生産が始まった新製鉄法の「ITmk(アイティーマーク)3」である。

「資源国や工業国から引き合いが山ほど来ている」(眞部晶平・神戸製鋼執行役員)というこの製鉄法。低品位の鉄鉱石と一般炭で鉄が生産できるため、世界中の資源、電炉メーカーも注目している。

神戸製鋼の場合、ベトナムで100%出資の製鉄所を建設。使うのは亜鉛をたっぷり含んだ「タッケー鉱山」の鉄鉱石だ。相対的にコストは安い。北部の一般炭も使うため、現地政府からも歓迎されるプロジェクトである。産出されるアイアンナゲット(鉄源)は、ハノイ東部に多い電炉工場に販売するほか、日本への輸出も考えているという。

「従来型の高品位な鉄鉱石輸入に頼った鉄鋼生産から舵を切る時期だと思う」(神戸製鋼幹部)。インドでは国営2社との新製鉄所建設も検討に入った。ここでも現地の低品位な原料を使う計画だ。

メジャーを横目に権益確保に走る一方、新技術で低品位品の原料も活用する。見通せない資源高の中、日本の大手鉄鋼は苦闘している。

(山内哲夫 =週刊東洋経済2010年9月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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