査定見直しでたちまち債務超過へ転落、日本振興銀行破綻で初のペイオフ発動
開業から6年、日本振興銀行は10日に経営破綻を金融庁へ申し出、預金保険機構の管理下に置かれた。これで、1預金者当たり元本1000万円までとその利息を支払う初のペイオフが発動されることになった。同日午後、振興銀行は東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請している。
木村剛元会長や経営陣の逮捕を受け、7月から振興銀行社長に就いた小畠晴喜(小説家・江上剛)氏は、このタイミングの破綻について、「7月に自己査定マニュアルを改訂し、大口融資先などの債権分類を見直し、今日に至った。非常に申し訳なく思っている」と説明。改訂後の基準で見直しを行った結果、貸出債権で巨額の追加引当が発生、SFCG(旧商工ファンド)との取引に絡む二重譲渡債権問題での損失や引当も加わり、約1800億円もの債務超過に転落する見通しとなった。そして、預金保険法に定める「財産をもって債務を完済することができない」状態に陥り、預金保険機構が金融管財人についた。
5月17日、振興銀行が発表した前2010年3月期の決算内容は、純損失が51億円、自己資本額が367億円。目立ったのは、預金量5927億円(前年度比47%増)、貸出残高4219億円(同34%増)という大幅な増加ぶりだった。しかし、同27日、昨年6月から今年3月まで続いた異例の長期間にわたる金融検査の中で、重大な法令違反等が認められたことから、金融庁は一部業務で4カ月間の業務停止命令を下し、ずさんな経営実態が表面化。その後、金融庁は検査忌避行為で警視庁へ刑事告発を行い、元経営陣の逮捕・退陣につながった。
一連のトラブルがあったものの、直近の預金量は約5800億円と、今年3月末時点からほぼ変わっていない。ただ、10日に公表された特別調査委員会の調査結果では、大口融資先に対する査定の甘さを指摘しており、「改訂前の自己査定マニュアルによる債務者区分の妥当性には、重大な疑問を表明せざるを得ない」とした。要は、まともな自己査定を行ったところ、資産内容が急変し、たちまち経営が瓦解したと言える。