"脇役メタル"亜鉛が急に輝き出したワケ 業界関係者のボルテージも急上昇

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需給逼迫を裏書きするように、LME(ロンドン金属取引所)の亜鉛在庫がこの7月、66万トンに落ち込んだ。ピーク時からほぼ半減。しかも66万トンのうち60万トンは投資銀行などが現先の利ザヤ稼ぎのために長期で塩漬けにしており、実需用には供されない。市場はカラカラなのである。

まだ"半値戻し"の段階?

足元、亜鉛市況は2200ドル台に下げているが、弱気な声は聞こえてこない。「これはドル高に伴う短期のアヤ。来年は今年より高くなる」(DOWAホールディングス系の亜鉛会社、ジンクエクセルの佐藤典和・営業部長)。

背景には、世界の有力鉱山の閉山がある。昨年のカナダのブランズウィック(22万トン)に続き、来年以降、優良鉱山として知られた豪州のセンチューリー(51万トン)をはじめ、年産13万~16万トンクラスの鉱山が続々、寿命を迎える。

一方、新鉱山の開発は進捗がはかばかしくない。いくら市況が上がったといっても、価格は銅の半分以下。しかも、銅鉱山は副産物として金・銀を産出するが、亜鉛の副産物は銀が中心だ。このため、開発の優先順位はもともと低い。現に資源メジャーのBHPビリトンは亜鉛をコア事業から外してしまった。

となれば、中国の需要が急落しないかぎり、需給は一段とタイトになる。伏兵があるとすれば、最大の鉱石産出国でもある中国の休止鉱山が再開すること。「中国の中小鉱山は一山2万トン。市況上昇で動き出しても、(有力鉱山の閉鎖による)80万トンの穴を埋められるか」(齋藤氏)。

投資ファンドの運用者たちは「埋め切れない」と踏んだようだ。8月、LMEの亜鉛先物の取り組みは、買い残が売り残の3倍になっている。

東邦亜鉛の丸崎公康取締役が言う。「3000ドル、4000ドルとは一概に言えないが、最高値4600ドルからはまだ半値戻しの段階」。ボルテージは上がる一方だ。

 

「週刊東洋経済」2014年10月4日号<9月29日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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