リーマン買収から2年、野村の真の国際化阻むハードル《新しい経営の形》
二度失敗の米国は鬼門 赤字部門の荒療治は必至
しかし、野村のグローバル経営への道は平坦ではない。
今、野村はグローバルなプラットフォーム(事業基盤)の完成を目指し、米州地域の陣容を急速に拡大している。人員は今年3月末現在1781人と2年間で67%増え、今期中には2000人へ増やす方針だ。旧リーマンの米国本社は英銀バークレイズが一足先に買収したため、自前で拡充するしかなかった。
ただ、米国は野村にとって“鬼門”だ。90年代以降、自己勘定取引で2度の大損失を計上し、そのたびに大幅な縮小を迫られてきた。失敗した市場にまた戻って、本当に成功できるのか、不安は付きまとう。
格付け会社スタンダード&プアーズの吉田百合・主席アナリストは、「今やバブルがはじけて環境が変わった。野村が目指している投資銀行の世界は衰退している」と話す。
旧リーマンが得意としていたような複雑な金融商品の市場は縮小し、金融規制も強化された。野村自身、手ガネを突っ込むビジネスから、顧客相手のビジネスへ重心を移している。ただ、今の世界では、経費の増大に見合った収益が上がりにくい。そうかといってリスク管理のグリップを緩めれば、元々リスクを取りたがる人材が増えただけに、以前にも増して深い落とし穴に陥る危険性がある。そこにジレンマがある。
旧リーマン中心の海外ホールセール部門は、収入は大幅に増えたが、高い報酬で経費も急増したため、赤字ないしカツカツの状況だ。その穴埋めをしている格好の国内営業部門からは不満も強まっている。株安に泣く株主の不満も含め、これらを押さえるには結果を出すしかない。
今後は赤字部門のリストラ断行も含め、収益体質のさらなる強化が必要となるだろう。野村のグローバル経営はこれから正念場を迎える。
(中村 稔 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年9月11日号)
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