ボックスも同様である。
会社で使うドキュメントやコンテンツの保存がその機能なのだが、ちょうど一般ユーザー向けソフトウエアと同じような、わかりやすいデザインやインターフェイスが、同社製品の特徴だ。「エンタープライズ級のテクノロジーを、どうやってエンタープライズ向けに感じられないような方法で届けるか」が、当初からのゴールだったとレヴィは語っている。
これはある意味では賭けだったろう。一般ユーザー向けのような「ゆるい」見かけにすぐに懸念を示す企業ユーザーも多いからだ。だが、ボックスの場合は、これが成功した。「使いやすいものを使いたい」という社員の希望、インターフェイスに一工夫を凝らす企業への共感のようなものが、今や一般、企業にかかわらずユーザー全体に広がっているのが理由かもしれない。
2005年に創業したボックスは、今や1000人以上の社員を抱え、最も急速に成長を遂げるエンタープライズ向けIT企業とされている。クライアントも、P&G、GEなどの超大手企業が名を連ね、また同社に投資をするベンチャーキャピタルも超一流のところばかり。今春には、IPO(新規株公開)の計画を明らかにしたことから、同社への注目はうなぎ上りに高まっている最中である。普通の感覚が大当たりした、というわけだ。
大物投資家から35万ドルの小切手
レヴィは、現在29歳。大学をドロップアウトしたこと、ガレージで友達と起業したことなど、典型的な起業家の道のりだ。そして大胆。
レヴィは、大学2年生のときに授業の課題でリサーチをして、この分野に商機があることをかぎ取ったのだが、その後、コンタクトを取ったのがマーク・キューバンである。キューバンは、起業で成功した大物投資家として知られる人物。別に知り合いだったわけでも紹介があったわけでもないが、メールを送った。驚くべきことに、その後、キューバンからレヴィの学生寮の部屋に35万ドルの小切手が届いたのである。当時、2人は、直接会ってもいないという。
そして、レヴィはグーグルやマイクロソフトという巨大企業よりも先駆けて、この分野に足を踏み入れた。最初は消費者向けのストレージサービスを行っていたが、そこが混み合ってきたために、企業向けに目を転じたのだ。けれども競争は決して簡単ではない。創業資金を提供してくれたキューバンとは、その後、戦略上の意見がかみ合わず、キューバンは株を手放している。
現在ボックスは、使いやすさの土台の上に、企業向けのビジネス・プロセス機能を加えて続けている。また、これからますます進むビッグデータ時代にも備えようとしている。
もっともホットなエリアに思わず足を踏み入れてしまった起業家。レヴィの勘と戦略が、時代に正しく舵とっていくのか。われわれはリアルタイムでそれを見ている。
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