子育て支援に乗じた官の肥大化を許すな

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 ところが一方で、疑問も多くある。まず、これだけの大改革を議事録も公開していない会議で決めてしまったことだ。子ども・子育て新システム検討会議は、少子化対策担当や総務、財務、厚生労働、文部科学、経済産業の各大臣などをメンバーに、今年4月27日に初会合が開かれ、次の6月25日には早くも改革案がまとめられた。その間、意見交換会が2回、作業グループの会合が6回開かれたが、そこでの内容が検討会議でどのように議論され、結論に至ったのかは知ることができない。

事務局の内閣府は、「検討会議には閣僚が何人も出席しており、議事録を公開すると自由闊達な議論ができないという閣僚もいた」(少子化対策担当者)と説明する。この理由がまかり通るなら、既得権益を守りたい人たちが自分たちに都合のいい結論をまとめることが可能になる。

その一つが、こども園への公定価格導入だ。改革案では、こども園への株式会社などの参入を促すため、一定の基準を満たせば自治体の補助を受けられる制度を提案。その一方で、こども園の基本料金は国が決めた価格に一本化することとした。

現在、幼稚園では、園と利用者が自由に契約し、料金も自由に設定できる。こども園に保育所と同じ公定価格を導入すると、競争原理は働かない。サービス低下や民間の参入意欲低下につながるおそれもある。

検討会議に関連して開かれた作業グループの会合や意見交換会には、「保育三団体」と呼ばれる全国私立保育園連盟、全国保育協議会、日本保育協会の担当者も参加した。そこで彼らは、幼保一体化や料金自由化、株式会社参入についてこれまで同様、おおむね否定的な意見を述べている。これまで、幼保一体化が何度も議論されながら実現しなかったのも、保育三団体やそれを管轄する厚労省という既得権益を守りたい人たちの抵抗が強かったからだ。

今回、厚労省はこども園制度をつくって規制緩和という“風当たり”を弱める代わり、公定価格を導入することで、保育三団体の権益を守ったといえよう。公定価格を通じて、厚労省の権限も残ることになる。

第一生命経済研究所の松田茂樹主任研究員は、「この仕組みでは、本当に保育サービスが充実し、待機児童が解消されるのかわからない。利用者の便益ではなく、官が肥大化し、やりやすい制度に変更しようとしているようにみえる」と指摘する。

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