要するに、川内原発の火山審査を科学的に行うことは、今の火山学の知見では無理がある。本来なら、規制委はそのように判断して、再稼働の是非は政治判断にゆだねるべきところだ。それなのに、根拠が不十分なまま、自説を押し通すような形で結論づけているので、多くの反発を招いている。
有事の際、燃料をどこへ搬出するのか
噴火の兆候が観測された場合には、九電は原子炉の運転停止や燃料の搬出など必要な対処を行うというが、具体的な対処方針についてはまだ示されておらず、今後、九電が策定して認可を申請する保安規定の中で示されることになっている。
こうした重要なことが未確定で、規制委の認可を受けていない状況では、審査はまだまだ終わったとはいえない。噴火の予知は困難なのに、適切な対処方針を定めることができるのか。原子炉から取り出した燃料は、最低5年程度は使用済み燃料プールで冷やす必要があるが、いつ搬出できるのか。どこに搬出先があるのか。疑問は尽きない。
規制委は仮合格証にあたる「審査書案」を7月16日に出した後、30日間にわたり意見公募(パブリッグコメント)を行った。パブコメ実施に法令上の義務はないにせよ、重要性に鑑みれば、これから審査される保安規定や工事計画を含めてパブコメの対象とすべきだったとの批判が出るのも当然だろう。
パブコメは結果的に1万7819件が寄せられた。「貴重な意見も多かった。きちっと精査して、(審査書に)反映すべきものは反映している」(田中委員長)というが、反映は字句の手直し程度で、実質的には無修正と言っても過言ではない。専門家から疑義が出ていた火山の審査手法に関する意見はまったく反映されなかった。噴火兆候把握時の対処方針への質問にも、規制委は「事業者において具体的な検討がなされる必要がある」とのみ回答している。形だけのパブコメとの印象はぬぐえない。
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