特種東海製紙の「シュ」は、なぜ「種」なのか? 特別な紙を作るトクダネさんの秘密

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今回、ここへやってきたのはきれいな紙をつくる工場だと聞いたからだ。“きれい”にはふたつの意味がある。クリーンとビューティフルだ。

クリーンとはもちろん、清潔であること。食品の包装や医療器具の滅菌に使う紙、クリーンルームでも安心して使える無塵紙、鮮明に印字できることが条件の預金通帳の用紙などをつくっている。

さっそく、そのクリーンな紙づくりの現場を見せてもらうことに。紙づくりと言えば、例の巨大マシン・抄紙機だ。

「うちの15号機は、日本製紙さんでご覧になったものと比べるとかなり規模が小さいと思いますが」とご担当の間宮智さん。

虫が飛んでこないように5階に抄紙機

大きな機械が整然と並んでいる

でも、同じ紙とは言え、使い道などがまったく違いますからねえ。などと話しながら移動していると、いつの間にか建物の5階に着いていた。なんと、巨大マシンをわざわざ建物の5階に設置しているという。なぜ5階かというと、この高さなら、虫が飛んでこないから。衛生管理のためなのだ。

入室に当たっても、エアシャワーを通る必要がある。求められる出で立ちも食品工場レベル。まず、不織布製のカバーを頭に被り、その上にヘルメット。それから、タイベック製の長袖の上着。ズボンの裾には体毛が落ちてこないように裾止め。靴には不織布製のカバー。

社員の方はこの部屋に入るときには靴を履き替える。間違いのないよう、外用の靴の靴紐は黒、室内用の靴の紐は黄色と決められているというのがなんとも格好いい。ヘルメットから耳栓がぶら下がっているのも格好いい。

本日は、15号機ではコンビニのレジ脇にあるようなホットケースで売られているコロッケなどを入れる袋に使う耐油紙を抄いている。これ一台で、医療用や預金通帳用の紙までつくるとは、なんともカバー範囲の広い抄紙機だ。

窓のないこの部屋には、卓球台の半分くらいの大きさの検紙台も置かれている。3面の壁と天井、そして台の下に蛍光灯が仕込んであって、5面から光を当てて紙に異物が紛れ込んでいないかを確認できる。

右、左、奥、上、下、と蛍光灯を点けては消しての検査の様子を見せてもらう。この台は、すかしのチェックにも便利そうだ。やはり紙幣用の紙もここでつくっているのではと言いそうになり、あわてて飲み込む。肝心な質問は、最後にぶつけることにする。

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