オミクロン株では、科学的な裏付けもそろい始めた。
12月22日に査読前論文が公開された英国スコットランドの研究では、オミクロン株の入院リスクはデルタ株よりも3分の2低下していた。11~12月の新型コロナ入院患者を調べたもので、ワクチンの追加接種者では、2回目接種から25週以上経過した人よりも症状が抑えられていた。
同日公表されたインペリアル・カレッジ・ロンドンによる英国イングランドの研究でも、オミクロン株ではデルタ株に比べて入院リスクが40~45%低。受診の割合も20~25%低かった。
岸田政権の迅速な判断と行動力に期待
もちろん当面はまだ油断できない。汎コロナワクチンも第Ⅲ相までの臨床試験をクリアしなければならならず、ここ数カ月で実現するものではない。
最新の『Nature』によれば、重症化を防ぐ抗体医薬も、オミクロン株に対してはほとんどが無力だという。抗体カクテル治療薬の中和効果は低く、もっとも優秀なGSK社のモノクローナル抗体薬「ソトロビマブ」でも、他の変異株と同等の中和効果を得るには3倍の濃度が必要だった。
重症に至らずとも、医学的な見地でいう新型コロナの「中等症」は、普通の感覚からすれば想像以上に苦しく厳しい。呼吸困難に陥り、人工呼吸器を導入するギリギリ手前の段階だ。
合併症や後遺症も風邪の比ではない。合併症は呼吸不全にとどまらず、発熱など全身に炎症症状が現れ、心臓から腎臓、肝臓などさまざまな臓器で次々発生することも多い。軽症や無症状だった人でさえ、後遺症(いわゆるロング・コビッド)の生じるリスクもある(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き)。
光が見えてきたとはいえ、新型コロナは現状まだ「全力で回避したい病気」に変わりない。まずは「今できること、すべきこと」を直ちに実行していくことだ。
例えば、ワクチンの追加接種は、各自治体の裁量で前倒しして当然だ。先に厚労相から「自由に前倒しを認めるものではない」といった発言もあったが、ナンセンスでしかない。
振り返れば、1・2回目接種だって実質的に「一律」でも何でもなかったのだ。具体的な実施方法は自治体に丸投げされ、その力量差が進捗状況に顕著に表れた。
すでに各自治体の在庫や接種体制に差がついている中で、中途半端な「原則」の提示がかえって混乱を招いている。
他方、岸田政権が12月23日、オミクロン株の市中感染が確認された大阪・京都と、感染拡大の懸念される沖縄で、希望者全員への無料PCR検査を早々に決めたことはおおむね高評価だ。
新型コロナとの闘いでは、これまでになくスピーディーで柔軟な対応が求められる。政府内で足並みをそろえるのも難しいに違いない。それでも、新たなワクチンや治療薬の導入等はもちろん、海外との往来再開も、タイミングを逸すれば大きな社会・経済的ダメージにつながる。
世界の動向を注視しつつ、科学をベースに適宜判断していくしかない。引き続き岸田政権の行動力に期待したい。
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