「追加接種」ファイザーとモデルナどちらが正解? 各社が開発急ぐ「オミクロンワクチン」の是非

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国内ではすでに両方のmRNAワクチンが追加接種の薬事承認を受けている。その時期について厚生労働省は当初から、「原則2回目接種から8カ月後以降」としてきた。

だが、この「8カ月」という数字は科学に基づくものではない。

「8カ月後以降」は科学を無視した大号令

ワクチン2回接種で得た新型コロナへの抗体の効力は、オミクロン株でなくても半年で大幅に減ることが世界中から報告されている。

アメリカのブラウン大学他の研究チームの報告では、ファイザーワクチン接種完了の半年後、抗体価は80%以上減少していた。国内でも同様の報告が続々上がってきている。

当然、国内でもファイザー製とモデルナ製ともに、追加接種は2回目接種の日から「6カ月」以降として薬事承認されている。

実際の運用はどうか。世界的には最新の研究結果等を踏まえ、6カ月すら待たないところも多い。オミクロン株の急拡大を受けた迅速な判断だ。

EU医薬品庁(EMA)は加盟国に対し、接種完了から6カ月以降の追加接種を推奨してきた。12月7日には最新データに基づき、「最初の接種完了から、早ければ3カ月後に実施することは安全で効果的」と説明した。

オミクロン株の出足が早かった英国も、ジョンソン首相が同12日、2回目接種から「3カ月」以上を経た18歳以上の国民全員を対象に、追加接種の年内前倒しを表明している(12月13日「BBC」)。

対してわが国では、一時は11月早々に「6カ月」の例外を設ける方針も示されたものの、あっさり厚労省通知によって骨抜きにされた。例外の対象を、クラスターが発生した医療機関に限定し、事前に厚労省に相談を求めたのだ(11月17日厚生労働省自治体向け説明会資料「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について」)。

すったもんだの末、岸田首相は12月17日、医療従事者や高齢者施設の職員・重症化リスクの高い利用者の合計3100万人分に限り、接種間隔を「6カ月」以降とする前倒しを表明した。

それ以外の高齢者も来年2月以降、2回目から「7カ月」経った人から順次接種を受けられるようにするという。自治体は振り回されっぱなしだ。

国内のドタバタ劇はひとえに、ワクチン供給・配送が追いついていないことによる。上記3100万回というのは、今あるファイザー製・モデルナ製を合わせた在庫分と見られる(ちなみに岸田首相は「6カ月」表明の前日、同社CEOに電話で直談判し、供給の前倒しを依頼したようだ。だが、確約が取れたという話は聞かない)。

ファイザー・モデルナともに在庫が限られている中での見切り発車なら、両ワクチンをちゃんぽんに打つ「交互接種」の必要が出てくる。

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