なお、筆者自身は、従来完全雇用実現を優先していた最近のFRB政策姿勢の転換が、政策ミスにつながる可能性が高いと見ている。
早すぎる引き締めで景気減速、選挙での政権敗北懸念も
需要過多よりも供給制約によってインフレが起きているなかで、早期に利上げを行えば、それは早すぎる引き締め政策になりうるからである。
また、2021年までのアメリカ市場における株高は「GAMAM」(Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoft)など特定巨大銘柄の企業価値評価が高まり株価が上昇したことなどが主な要因だった。FRBの金融政策ミスへの懸念は、こうしたグロース株の株価調整に直結しやすい。
もちろん、筆者の予想が外れて、FRBのテーパリング(量的緩和の縮小)加速と2022年の早期利上げが政策ミスにならず、インフレ沈静化につながり、「タカ派化」が成功とみなされる可能性もある。
FRBメンバーが2024年まで想定している利上げペースは緩やかなので、利上げが過剰な引き締めとなる「オーバーキル」に至らず、ファインチューニングとして成功するかもしれない。ただ、FRBの利上げが政策ミスであるかのかの判断には、相応の時間がかかるので、FRBの政策対応への疑念が強まりやすいだろう。
さらに、中間選挙(2022年11月8日)を控えて支持率が低下しているバイデン政権の政策対応が株式市場で懸念される可能性もある。
すでに、インフレ抑制をFRBにあからさまに要請したことが、失政の1つかもしれない。そして、バイデン政権が注力してきた「ビルドバックベター」(よりよき再建)と称される財政パッケージについて、バイデン大統領が民主党内をまとめられず、同法案が実現しないリスクもなおくすぶっている。2022年のアメリカ政治が混乱することを、示唆していると言えるだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人個人に属するもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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