心療内科医が語る、子どもには「いい甘え」が必要だ 明橋大二さんに聞く「大人の向き合い方」

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子どもの話を聞くときに大事なことは、「子どもが話したいときに、そのタイミングで聞く」ということです。とくに思春期の子の場合は、話しかけてきた「そのときに聞く」ことが大事です。

著者・明橋大二/イラスト・太田知子/1万年堂出版

思春期になると、子どもは親に話を聞いてほしいと、あまり思わなくなってきます。でも、ごくたまに、聞いてほしくなるときがあるわけですね。ところが親はそういうときにかぎって忙しい。「今ちょっと忙しいから」とか「あとにして」と言ってしまいます。

じゃあ、あとで子どもが話をしてくるかというと、来ません。気持ちが変わってしまうからです。ですから年ごろの子が「話がある」と切り出したときは、どんなに忙しくても手を止めて、そのときに耳を傾けてほしいですね。

よい甘えと悪い甘やかし

――子育て中は「甘やかしすぎかな」、「もっと厳しくしたほうがいいかな」という悩みはつきものです。子どもをどこまで甘えさせてよいのでしょうか?

コロナ禍で親子がいっしょにいる時間が多くなると、世話をしすぎている気がして「これは甘やかしかもしれない」と感じる人がいるかもしれません。甘えには、「よい甘え」と「悪い甘え」のがあるのをご存じでしょうか。よい甘えは「甘えさせる」と言います。悪い甘えは「甘やかす」と言います。どこがちがうかというと、2つあります。

まず「よい甘え」は、子どもの情緒的な要求に応えることです。子どもの「抱っこして」や「話を聞いて」の要求に応えることです。あるいは子どもが何かつらい思いをしているときに、手助けすることもそうです。これらはいくらやっても、「甘やかす」にはなりません。

一方、悪い甘えである「甘やかす」は、子どもの物質的な要求に、言われるがままに応えることです。「おもちゃ買って」「お菓子ちょうだい」「お金ちょうだい」などの物質的な要求に、言われるがままに応えるのは「甘やかし」で、よくありません。

大事なことは、情緒的な要求にはしっかり応えて、物質的な要求は制限していくことです。しかし今の世の中、ともすればこれが逆になっているんですね。親も忙しいので、子どもの情緒的な欲求に応えられない。その埋め合わせに物を与える。しかし物では子どもの心は本当には満たされません。

2つめのちがいは「子どもへの手助けの仕方」です。子どもがどうしてもできないことに対して、大人が手助けをする。これはとても大事です。自分が助けを求めれば、まわりの大人が助けてくれるという経験の積み重ねは、大人への信頼感を育てます。一方、子どもが自分でできることまで親が手を出すのは「過干渉」。これは「甘やかし」で、よくありません。子ども自身ができることは、どんどん本人にさせていく。でもどうしてもできないことは、大人が手助けする。そういうことが大事だと思います。

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