苦手な相手からうまく話を引き出せる人のスゴ技 相手が思わず話す、大切なのは質問ではない

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人前でメモを取るというアクションが、こんなにも相手を喜ばせるものだったということに、社長はそこで気づいたのだといいます。以来、どんな場所に行っても、せっせとメモにペンを走らせるようになったのです。それこそ部下や後輩の話も、メモをしていったとおっしゃっていました。

自分の話を上司がメモしてくれている。これも部下にとっては驚きでもあり、一方でうれしいことだったのではないでしょうか。また、そういう上司に対して悪い印象を持つ部下はいなかったのではないかと思います。そして、やがて彼は社長にまで上り詰めたのです。

ということで、メモは絶対に取ったほうがいいのです。相手に好印象を与えるから。自分の話をメモしてくれている人に悪い印象を持つ人はいないから。正確な仕事をしてくれそうだ、という印象を与えることもできるでしょう。

7割は顔を上げ3割でメモを取るのがベスト

私はインタビューするとき、必ずICレコーダーで録音しています。あとでそれを聞けばいいのですが、それでもせっせとメモを取っているのは、メモの効能は他にもあるから。好印象を作ってくれるからです。だから、あえてメモを取っているのです。

『『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

そしてメモを取るときには、じっと目線を落としたままにしないこと。基本は顔を上げて目線を相手に向けること。そしてときどき、メモに目を落とす。ずっとメモを取りっぱなしというのも、これまた印象がよくないのです。

目線をじっと相手に向けるのも良くないのですが、その意味でもメモは使えます。自然に目線を外すきっかけになるからです。人にもよると思いますが、6、7割は顔を上げ、3、4割でメモを取るイメージでしょうか。

ちなみにメモは、相手へのサインにもなります。話が脱線してしまい、その話は聞きたくないなぁと思うときには、メモを止めて顔を上げてしまうのです。このアクションは、この話は興味がないのでメモしませんよ、という無言のメッセージになります。私がときどき使う手法です。

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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