沖縄「泡盛」が本土復帰50年で直面した最大の試練 酒税軽減措置の廃止で「泡盛離れ」に拍車も

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そこで組合は自ら、軽減制度を廃止することを提案。軽減措置が突然撤廃されると、酒類メーカーへの影響が大きいことから、段階的な廃止を求めた。結果として、この案が税制改正大綱に盛り込まれることになった。

組合が示したのは10年を期限に、出荷量に応じて3つのグループにわけて軽減幅を変えるというもの。年間出荷量1300キロリットルを超える大手のグループAは2年後に現行の35%から25%に、中堅のグループBは35%から30%となり、その後は段階的に引き下げられ2032年にはゼロとなる。

10年間で生き残りを図る

一方、グループCにあたる年間出荷数量が200キロリットル未満の小規模酒造は、2032年まで現行の35%軽減が続くが、2032年には措置廃止に伴い0%となる。つまり10年間は現状維持だが、10年後には一気に軽減措置がなくなってしまう。

小規模酒造が出荷数量で占める割合は全体のわずか14%だが、事業所数としては34社、県内酒造の7割を占める。組合の新垣氏は「小規模酒造所はほとんどが家族経営で、細々と営まれている。措置が延長されたと安心していると、10年後に大変なことになるだろう」と懸念を示す。

措置延長が適用される小規模酒造所の1つが、沖縄県石垣島で100年以上続く玉那覇酒造所だ。社員5人での経営で、社長も自ら製造現場に立つ。「10年後には価格優位性がなくなり、競争は一層厳しくなるだろう。それに耐えきれる酒造になれるかどうか」。同酒造所の社長、玉那覇有一郎氏は危機感を抱く。

10年後に備え同社は、商品販路を沖縄本島や県外、さらには海外にも広げたい考えだ。だが、「何せ人が足りず、手が回らない」(玉那覇氏)。そのため、商品数を絞り込んで仕事を効率化し、営業活動に注力する時間をつくった。

資金も必要だ。そこで、段階的に値上げをする予定だという。先行して酒税の軽減率が下がり、値上げを実施すると見られる大手酒造に追随する形を狙う。同社の酒税率は10年間変わらないため、値上げした分はそのまま利益として確保できる。それを販路拡大の投資資金に回す目算だ。

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