ビートルズ「横断歩道を歩く写真」が撮影された訳 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter39
ある日のセッションの合間、ジョンは自宅に帰って休憩しながら、ヨーコが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ『月光』に耳を傾けていた。
すると突然、インスピレーションが降りてきた。
「コードを逆に弾いてみてくれないか?」と、ジョンはヨーコに頼んだ。
ヨーコはコードを弾いてみせ、ジョンはそれを聞きながら、「ビコーズ(Because)」を書き上げた。
「『ビコーズ』は、僕たちが作った中で最も美しい曲のひとつだ」とジョージは語っている。
「ハーモニーは3つのパートにわかれている。ジョンとポール、そしてジョージだ」
「アルバムの名前は『アビイ・ロード』だ」
アルバムのタイトルは、4人全員が合意できるものでなくてはならない。
世界最高峰の山の名であり、英国で人気のタバコの銘柄でもある『エベレスト(Everest)』が、これまでのところ最有力候補だった。
だが、アルバムのジャケット写真を撮るために国境を越える気があったのは、ポールだけだった。
「でも、『エベレスト』というタイトルにして、チベットで写真を撮るんじゃなかったら、どこに行けばいいっていうんだ?」とポールが聞いた。
リンゴが、簡単な解決策を思いついた。
「スタジオから一歩外に出ればいい。アルバムの名前は『アビイ・ロード(Abby Road)』だ」
もちろんこれは冗談だったが、ポールはこの案が気に入り、さっそくラフ・スケッチを描いてみせた。
ビートルズの4人がアビイ・ロードの横断歩道を一列になって渡っている構図だった。
カメラマンのイアン・マクミランは、ジョンが連れてきた。彼は、ジョンとヨーコが出会った1966年のインディカ・ギャラリーでの個展で展示の撮影を担当したことがあった。
8月8日の朝、マクミランは脚立を引っ張り出すと、アビイ・ロードのど真ん中にそれを置いて、警察が車の流れを止めるのを待った。
全身白ずくめのジョンが先頭を歩き、黒いスーツ姿のリンゴ、手にタバコを持った裸足のポール、デニム姿のジョージが続く。
マクミランがシャッターを切る中、4人は横断歩道を6往復歩いた。
その日撮影された写真で、4人の歩調が完全に揃った瞬間を収めたものは、1枚だけだった。
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