ビートルズ「横断歩道を歩く写真」が撮影された訳 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter39

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アメリカのビザがなくても、英国のパスポートがあればバハマ諸島には上陸できる。ジョンとヨーコは5月24日に当地へ飛んだ。

平和を訴えるパフォーマンス「ベッドイン」

だが着いてみると、アメリカのマスコミとの距離感が2人の想像よりもずっと遠いものに感じられたため、今度はカナダのトロントへと移動した。

空港では移民当局によっていったん勾留されたものの、最終的には10日間の滞在を許可するビザがおりた。

5月26日、ジョンとヨーコはモントリオールの格式あるクイーン・エリザベス・ホテルのスイート・ルーム1742号室で、8日間にわたっての平和を訴えるパフォーマンス「ベッドイン」を開始した。

モントリオールなら、ニューヨークを拠点とするマスコミからも、十分な近さだった。

「なぜ、陰で物事を動かしている実力者たちと直接話そうとしないのですか?」

あるレポーターが尋ねた。

「話すって、何を?」と、ジョンが聞き返した。

「そういうことじゃないんだ。アメリカ政府は、僕を国から締め出しておくのに忙しいみたいだしね。彼らは僕の言うことを真に受けはしないし、重視もしないと言うけど、それならなぜさっさと僕を入国させないんだろう?」

一方で、アメリカとカナダのラジオ番組司会者たちは、ジョンを電波上で大歓迎した。ジョンがサンフランシスコのラジオ局、KSANに電話で出演したときには、サイケデリック・バンド、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのメンバーたちが彼の言葉を一言も聞き漏らすまいと耳を傾けていた。

彼らは番組終了後、ジョンに向けてこんな手紙を書いている。

「あなたのアドバイスは、的を射たものです。おっしゃる通り、暴力は暴力を生むだけです。それにしても、ピープルズ・パークでの出来事はひどすぎました。あなたの言葉に救われる人は、大勢いるはずです」

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