ただし、デジタルでありさえすれば偽造防止ができるわけではない。ワクチン接種や検査結果データを提示するにあたり、そのデータは確かに医療機関が一定の基準に基づいて提出したものだという真正性を誰が担保できるのかという問題も解く必要がある。ブロックチェーンなど、技術的にデータの信頼性を担保するような仕組みが増えてきている中で、究極的にはどのような根拠で目の前のデータを信頼するかという問題である。
この問題について、EUや中国では、国家が保証するというアプローチをとっている。しかし、アメリカ、カナダはSHCを用いて、民主的に相互に信頼を構築する方式を採択している。これは、国際的な学術論文が、世界の研究者の査読(ピア・レビュー)によって評価されるのと同様の仕組みである。科学的な領域では、国家のような権威ではなく、科学者のコミュニティが信頼を付与するものだという伝統がそこにはある。今回、日本もSHCを用いて同じ思想によるデータの取り扱いを可能としたことは特筆に値する。
デジタル証明書の活用による政策立案の必要性
デジタル証明書を活用することで、新型コロナウイルス対策の有効性に関するデータを蓄積し、エビデンスに基づく政策立案を発展させることも大切だ。現状のワクチン・検査パッケージの機能には含まれていないが、スポーツ施設、文化施設、レストラン、交通機関などでデジタル証明書が活用されるようになれば、さまざまな新型コロナウイルス対策の有効性に関する科学的な調査も、本人の同意に基づき可能となる。
新たな変異株であるオミクロン株が出現した今、デジタル証明書を活用したデータ基盤の形成と、そのエビデンスに基づく政策立案が急がれる。
相互運用性の確立は、国内外で重要な課題となっている。ワクチン・検査パッケージに関しては、わが国では欧州とは違って政府が公式のものを作らない方針であるため、民間主導でさまざまなアプリが既に乱立している。国際的にも、海外渡航時の証明書提示用のアプリが乱立している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら