競合プレゼンは「最悪」と断言できる3つの理由 参加者もクライアントも不幸になる悪循環

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だから私たちは、「コンペだったらやりません」と伝えています。いい結果が生み出せるとは思えないからです。

理由3:クライアントサイドも損しかない

実は、クライアントサイドにとっても競合プレゼンは、いいことがまったくないと思います。例えば広告代理店も今、働き方の問題も含めて、昔のようなクライアントへの綿密な対応は難しくなっています。そして、コンペばかりやらされて案件が取れるか取れないかわからないようなクライアントには、正直なところ、優秀なスタッフを貼り付けることが難しいのが現実です。せっかくチームを組成したのに、「残念でした。来年もコンペです。チームは解散です」なんてことになったら、優秀な人材をそこで固定するインセンティブも働きません。

常に値踏みされ、切られるかもしれないクライアントよりも、自分たちのことを信じて頼ってくれるクライアントのところに優秀な人を担当させようと考えるのは、当然だと思います。ところが、意外に多くの人がこのことに気づいていない印象があります。コンペで競わせるよりも、信頼できるパートナーとどうやって関係値をつくり、どうやってアイデアを出させるかを考えるほうが、はるかに生産的で前向きです。

実際、本当のプロは、コンペになった瞬間に冷めてしまいます。きちんとしたパートナーシップを築けなければ、一生懸命やってもらえないどころか、引き受けてもらえないリスクもあると思います。

たとえ話でよくするのは、「競合プレゼンとは、結婚相手を探している人が、結婚相談所から紹介された3人の異性を呼び出して、同時に食事をするようなものだ」ということです。同時でなかったとしても、「あなた以外の人とも会うからね」と言いながらデートをするようなものです。相手はどう思うでしょうか。それでも喜んで来てくれるでしょうか。そんなプロセスで、本当にいいパートナーと出会えるでしょうか。

そんなパートナー探しをするのではなく、気になる人がいた時点で、きちんとコミュニケーションを取って、自分のことを理解してくれる人なのか、自分のことを託していい人なのか、きちんと見極めて関係値を築いていくことが大切だと思います。

私たちも、競合プレゼンではなく、指名で頼られるからこそ、緊張感が生まれます。成功を請け負い、失敗することが許されなくなる。すべての責任が自分たちに委ねられることになる。そして、この緊張関係をチームのメンバー全員にプロフェッショナルとして持ってもらうことが、とても重要だと思います。

齋藤 太郎 コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター

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さいとう たろう / Taro Saito

慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える。

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