競合プレゼンは「最悪」と断言できる3つの理由 参加者もクライアントも不幸になる悪循環
ところが、競合プレゼンになるとそれができません。「競合プレゼンです」となった瞬間に、クライアント側は出てきたものを判断する「大岡越前モード」になって、会議室という白洲で「大岡裁き」をする立場になります。そうなるともう、前提の話を覆すことができない。
つまり「本当の課題」や「課題の本質」を探ることができなくなるのです。たとえ前提が間違っていたとしても、あらかじめ用意された要件定義に照らし合わせて、○か×かを判断する、というスタンスになってしまうのです。
理由2:課題の解決ではなくプレゼンの勝ち負けになる
競合プレゼンになると、プロフェッショナルは、オリエンに沿った「最もいいと思われる解」、つまり「勝てる案」を提案することになります。しかし、それが世の中に対して本当に効く提案なのか、投資効果が高い提案なのかは、実はまったく違う話です。
言葉を換えると、競合プレゼンになった途端、プレゼンの競合相手であるライバルに勝とうと考えてしまうということです。クライアントの競合他社や、世の中に勝とうとせずに、です。
競合プレゼンの勝者というのは、オリエンされた内容に対しての答えを最もうまく作れた人であり、本当の答えをうまく考えた人ではない。想定していた通りのモノができ上がってクライアントがいい気持ちになるだけで、世の中の人の気持ちは一切動かない「接待広告」のようなものができ上がってしまう可能性が高い。こうなると最早、本当の勝負とは言えません。
どうして企業は競合プレゼンをしたがるのか。そこには大きな誤解があると私は感じています。たとえば「多くのアイデアから選んだほうがいいものが見つかる」「いくつかの中から選んでやっていったほうがうまくいく確率が高くなる」と誤解しているのです。
しかし、条件競合ではなくアイデア競合ですから、勝負させたらいいものが出てくるとは限りません。そもそもオリエンで説明された要件定義が間違っていたら、本来必要だった結果には絶対に近づけない。
また、上役に対して「コンペで比較をして選びましたよ」と言える状況を作り出すために競合プレゼンをするケースも残念ながら多いようです。これはお役所の仕事と同じです。 結果ではなく「相見積もりを取りました」と言えるプロセスを重要視しているのです。そうすれば、結果的にうまくいかなかったとしても、提案をした相手のせいにできる。うまくいけば、選んだ自分の手柄にできる。これは決して珍しい話ではありません。
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