地デジ完全移行の正念場、1100万世帯が未対応


 低所得者への対応も急務。総務省の調査では、年収200万円未満の世帯における3月時点の受信機の普及率は67・5%と、全体の83・8%を大きく下回る。生活保護世帯を中心とした簡易チューナーの無償配布についても、総務省は今年度で約120万件を見込むが、周知の遅れから6月末時点での申し込みは2割弱にとどまる。

ここへ来てアナログ放送終了の“前倒し”案をめぐる議論も紛糾している。

総務省と民放、NHKで作る全国地上デジタル放送推進協議会は4月、完全移行の約1カ月前から全時間帯でアナログ放送を「お知らせ画面」に切り替える案を打ち出した。画面全体にアナログ放送終了を伝える字幕を表示するため、視聴者は実質的に番組を視聴できなくなる。

延期を求める声も

総務省は「来年7月24日に突然アナログ放送の番組を見られなくすると、相談先がわからなくなり、対応できない人が出てくる。視聴者が確実にデジタル放送に対応するために必要な措置」(地上放送課)と強調する。が、同措置には主婦連合会などが反発する。

さらに、今月にはテレビ局の代表である日本民間放送連盟の広瀬道貞会長が一転して、「24日まで番組を見られるようにする」と発言。事態はさらに複雑化しそうだ。

こうした中、有識者からは移行延期を求める声が出始めている。放送業界に詳しい立教大学の砂川浩慶准教授らは2~3年の延期が必要とする提言を発表。「このままではテレビを視聴できない家庭や事業所が数百万の規模で発生する。コストをかけて実現不可能な計画を無理やり実行するより、先延ばしにするメリットのほうが大きい」と話す。

もっとも、総務省は「延長する考えはない」(原口総務相)。ならば山積する一つひとつの問題に緻密に対応していくしかない。残された時間はわずかだ。

(中島順一郎 撮影:引地信彦 =週刊東洋経済2010年8月7日号)

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