社会人10年目「転職すべき人」とそうでない人の差 最初の転職の年齢が高いほど変化対応は難しい

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まず、もし社会人10年目前後で、まだ1社目の会社に所属している場合。

とくにその所属会社が日本本社の会社で、20世紀から続くような伝統的な企業である場合。迷っているのであれば、すぐに転職活動をしてみたらよいでしょう。

一説には会社の平均寿命は30年とも言われています。あなたが所属している会社は、早晩存在意義の見直しが必要になります。もしかしたらすでに使命を終えて、流れで継続しているだけの状態かもしれません。

また、現実的には最初の転職の年齢が高ければ高いほど、変化への対応は難しくなります。どのようなことでも、初めての経験は不安があるもの。体力や、変化への順応性、ライフステージの進展に起因する身軽さも、一般論として年齢とともにリスクが高まるものです。

しかし1度経験しておけば2度目や3度目の転職の年齢がいくつであっても、経験済みのものは対応へのハードルが一気に下がります。

「長く勤める」メリットも

安易な転職を勧めている訳ではありません。15年もの長きにわたりIBMで勤めたように、私自身は組織に長く勤めることには肯定的な考えを持っています。

『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

長期間の勤務によって見えてくるものや積みあがる成果が多いのは事実です。継続的に1つのスキル領域を極めたり、同じ顧客を担当してともに成長したり、勝手知ったるメンバーとともに強いチームを作り上げたり。そんな経験から生まれる強みは、数多あります。

何より、もしつらいときや厳しい状況に陥って現状から逃げたくなっても、頭の選択肢の中で「組織から出ていく」の順位を排除する、もしくは圧倒的に優先順位を下げておけば、ギリギリまで「逃げずに解決しよう」という意思や努力が生まれてくるものです。

私自身も、20代のジョブホッパー経験からの学びがあり、30代はIBM一社で過ごすと強く決意して、30代の間は極力、転職というオプションを自分の選択肢から排除しました。結果的にそこで培った力やネットワークは、現在も生きています。

そんな経験から、あなたがもし、2社目、3社目の会社に所属している立場で「今の会社に留まるべきか出るべきか」という迷いがあるとすれば、私は一義的には「いったん留まるべき」と助言します。

留まって、現状の打破に向けてできうる工夫を重ねることをおすすめします。

ただし、あなたの信念にそむく行いを強要されたり、明らかなパワハラやセクハラ、ブラックな環境下にあると思われる場合は、話は別です。すぐに助けを求めましょう。

河野 英太郎 株式会社アイデミー取締役執行役員COO 株式会社Eight Arrows代表取締役 グロービス経営大学院客員准教授

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こうの えいたろう / Eitarou Kouno

1973年岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までの間、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員COOを務める。
著書に『99%の人がしていないたった1%のコツ』シリーズ、『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー)

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