「防災行政無線が聞こえない」重大問題への処方箋 いつ起こるかわからない災害への備えは不十分だ

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災害時に避難場所などになる280カ所を超える区の全施設には、こうした災害関連情報を流すFMえどがわの放送に切り替わる「緊急告知ラジオ」を配布。江戸川区はシステム構築と緊急告知ラジオの配布を含め、計8536万円をかけた。

コミュニティーFMは、隣の江東区にもある。こちらは、レインボータウンFM。江東区は、2020年度に区内全世帯を対象に、手のひらサイズの防災ラジオを配った。大規模災害時には、区からの情報をもとに、レインボータウンFMが災害関連情報を流すという。

江戸川区の緊急告知ラジオ。すべての区の施設にあるほか、一般向けにも販売されている(撮影:河野博子)

周波数不足という壁

大規模災害時にサバイブするためには、どこそこの避難所が追加開設されたとか、もう満杯だとか、どこそこの道路が冠水で車は通れない、などの身近な情報が必要になる。だから、普段はうるさいとさえ思う防災行政無線に耳を傾けたり、コミュニティーFMがある地域では、ラジオに聞き入ったりする。

総務省によると、大規模災害の発生増とともにコミュニティー放送(コミュニティーFM)を行う事業者が増え、2020年度末で334事業者が開局している。

2014年10月、コミュニティーFMが使用可能な周波数が76.1メガヘルツから94.9メガヘルツまでへと拡張された。これにより、コミュニティーFMの開局ラッシュが起きた。関東総合通信局によると、2014年12月に同局管内のコミュニティーFMは46局だったが、2021年12月現在は72局と26局も増えた。

東京23区内にコミュニティーFMは7局。連携して災害関連情報を流すことにより防災行政無線が聞こえないという問題をカバーできるためか、「うちにはコミュニティーFMがないので……」と残念そうに話す区もある。開局したい事業者にとっては、経営が成り立つかという問題もさることながら、周波数が逼迫しているという事情がネックになっている。

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