「防災行政無線が聞こえない」重大問題への処方箋 いつ起こるかわからない災害への備えは不十分だ
ところが、足立区では必要な機器を整備したものの、「災害時、スムーズに開局できることを保証されているわけではない」という。東京23区およびその周辺では周波数事情が逼迫しているからだ。関東総合通信局管内の343市区町村のうち、足立区を含む14自治体はすでに高価な送信設備を導入するなどしており、災害時の周波数確保を確実にしてほしいと、強く要望している。
コミュニティーFMと連携する自治体
「2019年の台風19号の時は、10月12日の朝から気持ちが張り詰めてたというか、高揚していたというか、3人が局に泊まり込んで台風情報を伝えました」と振り返るのは、FMえどがわのチーフ・ディレクターの松尾典枝さん(28歳)。
「江戸川区は中川以西の人々に避難を呼びかけたのですが、『以西の』といってもわかりにくいので、町名を読み上げたり、防災の用語をやわらかく言い換えたりしました。リスナーから『不安がやわらいだ』と言われたり、視覚障害者の人からお礼のメールをいただいたりしました」
FMえどがわは、2022年に開局25年を迎えるコミュニティーラジオ。ラジオ少年だった池田正孝社長(78歳)が、大手レコード会社でラジオ番組の制作にも携わった経験を生かし、1996年に会社を設立した。
「鉄道路線がすべて東西に走る江戸川区の南北地域間で文化交流を活発にしたかった」と池田社長は話す。開局当時の文書は「万一の場合を想定した時、このコミュニティーFM局は、区民にとり心強い支えであることが明白であり~」と防災面での意義を強調している。
資本金1億円のうち、1000万円を出資する江戸川区は、2012年度、さらに2016、2017年度にFMえどがわと連携した区の情報発信を可能にするシステム構築を行った。これにより、FMえどがわの通常放送のさなかに江戸川区の庁舎から発信しての「割り込み放送」が可能になった。このほか、区庁舎内の防災行政無線の放送部屋からも直接、「割り込み」を行える。
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