「防災行政無線が聞こえない」重大問題への処方箋 いつ起こるかわからない災害への備えは不十分だ

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加須市はもともと公共施設や自治会長宅に置いた専用受信機で受信できるようにしていた。「地域振興周波数」を使った仕組みで、これを導入した個別の防災ラジオに利用。現在デジタル化されている防災行政無線をアナログ電波に変換して届けている。

「防災アプリがあるので、これはいらなくなった」と防災ラジオを返しに来る市民もいる。一方で、パソコンやスマホを持っていない人もいる。これまでの大規模水害時にほかの自治体で電話により防災行政無線の放送内容を確認できるサービスがパンク状態になった例もあり、防災ラジオは頼れる存在といえる。

加須市で希望する世帯に無期限無償貸与された防災ラジオ(撮影:河野博子)

臨時災害放送局という手段に残る不確かさ

「2017年度から防災行政無線のデジタル化を進めまして、屋外スピーカーの数も141カ所から201カ所に増やしました。『聞こえやすくはなった』『聞こえる範囲が広がった』と思います。ただ台風などの際にどうなのか、という課題は残ります」と話すのは、東京・足立区の物江耕一朗・災害対策課長。

では、足立区は残る課題にどう対応しているのだろうか。

1つは、防災無線が聞き取れなかった時に電話で放送内容を確認できる「防災無線テレホン案内」を、いっせいに電話がかかっても「数千人が同時に聞ける」タイプに変えた。区のホームページへの情報の掲載、区の公式ツイッター、フェイスブック、LINE公式アカウント、エリアメールなどもそろえた。個別の防災ラジオ導入については予定していないが、臨時災害FMを開局できるよう、機器を導入したという。

臨時災害放送局(臨時災害FM)は、2011年3月の東日本大震災直後、岩手、宮城、福島、茨城県内に次々に開局し、注目を集めた。災害発生時に総務省の地方総合通信局が自治体から電話による申請を受けて電波を割り当て、災害が落ち着いた後、書面で申請を出してもらう方法がとられる。

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