タイプ別「困った部下」の効果的な指導の仕方 「楽をしたいタイプ」は仕事への貢献度を褒める

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2.知識は豊富だが実際には動かないタイプ

口だけで、なかなか行動しない相手に対して、「まずはやってみて」と、突き放したくなることがあるかもしれません。しかし、このような伝え方は逆効果。余計に不満を溜め込む可能性があります。このタイプへの指示で重要なのは、行動を導くように相手に働きかけること。「君の言うことを実践するために、○○を試してみたら?」「それを実現するために、どうしたらよいと思う?」など、具体的な動き方を伝えたり、どう動くべきかを自分で考えさせ、行動に結び付けることが大切です。口だけなら何でも言えます。言うのとやるのとでは、大きな違いがあり、本人も実際にはどうしてよいのかわからない場合も多いのです。

承認する際も、「知識」だけに着目して「よく知っているね」などと褒めると、嫌みととらえられてしまうことも。まずは、行動を促すような働きかけをし、少しでも実践できていれば、「よい動きができているね。その調子で行動を増やしていこう」など、実践した内容を評価することで、実践へのモチベーションを高めることができます。

3.逃げ腰で楽をしたいタイプ

「やる気はあるのか」と、思わず怒りがこみ上げることもあるのが、このタイプ。しかし、安易に叱ってしまうと余計に頑なになってしまう可能性があります。また、一時的に行動を見直したとしても「できるだけ楽をしたい」という姿勢は変わりません。このタイプには、仕事の意義や全体像を伝え、意識を変える働きかけを根気強く続けましょう。また、仕事を楽しいと感じてもらうために、スモールステップ(目標を細分化し、小さな成功体験を積み重ねながら仕事を覚えていく方法)で指導することが重要です。

このタイプを承認するときのコツは、会社・チーム・仕事への貢献度を伝えること。例えば、「おかげで助かった」など、相手の貢献度を感謝の言葉とともに伝えるようにすると効果的。「人の役に立っている」と実感させることが、仕事への積極性につながります。

投げ出さず「相互理解」に努める

いずれのタイプも、「相互理解」が大切で、投げ出さずに積極的に関わっていくことが大切です。思い込みや決めつけで人間性を判断してしまうと、正確に相手を理解できず、どこかで必ずコミュニケーションの行き違いが発生します。一度コミュニケーションの行き違いが発生すると、お互いに関わることを避けるため、指示や指導はどんどんと難しくなっていきます。

そうならないためにも、定期的に対話をする機会を作るなど、直接接触する機会を増やしましょう。いわゆる「ザイオンス効果」の利用です。ザイオンス効果とは、同じ人やモノに接する回数が増えれば増えるほど、その人やモノに対して好印象を持つようになる心理現象のことです。ただ、すでに関係が悪くなっている場合は、逆効果になることもあります。しかし、人は違う一面を認識できれば、相手に対する意識も変わるもの。相手を尊重する姿勢を示すことにより、関係改善につながります。

自ら積極的に動いてくれる部下を育成するための参考になれば幸いです。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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