農家と都会の企業をつなぐ新たな農業ビジネスモデル、「あっぷふぁーむ」の挑戦
鳥取・米子市内から内陸に向かって約30キロメートル。森林に囲まれた山里風景が広がる日南町は、きれいな水と肥沃な土壌に恵まれた山陰屈指の米どころだ。だが、ご多分に漏れずこの町も、慢性的な農業の担い手不足に悩まされている。人口約5000人のうち約45%が65歳以上。高齢・過疎化は止まらない。
高橋隆造さん(36、上写真左)が、新規就農を志してこの日南町に移り住んだのは1年半前の09年3月。高橋さんは大阪府の出身。農業の経験など、もちろんなかった。それでも、高橋さんがこの地で設立した農業生産法人「あっぷふぁーむ」は今、地元の大きな期待を集め、話題を呼んでいる。その理由は、かつて地元では誰も考えつかなかった新たな農業のビジネスモデルにある。
あっぷふぁーむは、自らが管理する約1ヘクタールの田んぼで米作りに取り組みながら、企業を対象とした水田の「オーナー制度」を運営している。大阪や東京の企業が町内の水田のオーナーとなり、地元農家が実際の米作りを行う仕組みだ。
それぞれの水田には、オーナーとなった企業の看板が設置され、収穫した米はオリジナルの米袋に詰めて、オーナーの元に届けられる。
水田のオーナー制度を運営しているところはほかにもあるが、その多くは個人向けのもの。あっぷふぁーむは企業だけをオーナー対象としている。
オーナー企業は、こうした米を中元や歳暮などの贈答に利用することで、「環境保全」や「食へのこだわり」などといった企業のイメージ向上につなげることができる。社員教育や福利厚生の一環として、自らの契約水田で農作業体験を行うこともできる。
一方で、地元農家の収入は安定し、農作業体験などの交流会を実施することで町は活気づく。あっぷふぁーむは、こうした企業と農家の仲介役を担っているのだ。