劇団「わらび座」が一般社団法人で再建目指す背景 11月に民事再生手続き、アパマン社長が再生支援

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再建策は、大村社長が再建に関わったサッカーJリーグ、アビスパ福岡(福岡市)のスキームを参考にしている。大村社長がスポーツ産業学会の研究誌『スポーツ産業学研究』に寄稿した論考「アビスパ福岡の経営危機とその克服の経緯」(2019年)や、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に提出した修士論文(2020年)に触れられている。

それらの論文によると、静岡県藤枝市から福岡市に移転したサッカーチームであるアビスパ福岡が、経営不振で2014年の時点で債務超過に陥っていた。解消されない場合はライセンス不交付となる可能性があった。そこで、地域貢献を条件にアパマングループの関連会社が第三者割当増資を引き受ける一方、2014年12月には「オール福岡」で支えるために、多くの地元企業や経済団体で構成する支援協議会を立ち上げた。

ミュージカル「空!空!!空!!!」の舞台風景。日本を飛び回った秋田出身の女性飛行士・及位ヤエの物語だ (写真:わらび座)

地域と一緒にクラブを作り上げていく姿勢を明確にし、経営を透明化。そしてファンやサポーターとの連携を密にして支援形態を多角化した。小規模の会社や個人でも支援できる「サポートファミリー制度」を構築し、広告出稿のみならず、活動そのものを支援できる仕組みを作った。

また、福岡の商店街や関連の場所でポスターやのぼりの露出を徹底的に行い「福岡の地元チームを支援するという雰囲気を醸成」したという。

そうした取り組みが奏功し、5年間で観客動員数やスポンサー数、売上高を大きく伸ばすことに成功した。大村氏は論文の中で、「経営危機に際して、クラブの理念に立ち戻り、また一つ一つの経営課題の改善に取り組み、観客やスポンサーに向き合うことで危機を脱却してきた」としている。

同様の取り組みがわらび座の再建でも進むと思われる。ただ、アパマングループの関連会社が資金的支援をアビスパ福岡再建のときと同じように行うかどうかは明らかにされていない。

わらび座の「灯」を消すな

民事再生法適用の申請で、「わらび座の灯を消すな」という声が各方面からあがっている。

支援協議会が衣替えしたサポート組織で、引き続き名誉顧問を務める内館牧子氏は「『秋田にはわらび座があるんだよなア』という羨望を、今度は私たちが形にする番です」とコメント。内館氏はかつてわらび座の作品の脚本を手がけたことがある。同じく名誉顧問の教育評論家、尾木直樹氏は「教師時代に生徒を率いて、わらび座でソーラン節を踊る修学旅行に訪れた経験があります」「子どもたちをたくましく成長させるわらび座の伝統を、守り抜きたい」とメッセージを寄せた。秋田県は今後、わらび座に秋田を紹介する映像の制作を依頼し、地方巡演の際に上映してもらう意向だ。

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