劇団「わらび座」が一般社団法人で再建目指す背景 11月に民事再生手続き、アパマン社長が再生支援
今後は株式会社から「一般社団法人」に組織を替え、全国から幅広く支援を募ることになる。
この珍しい一般社団法人による再建。演劇経営のあり方、地方創生のあり方を占う点で示唆に富んでいるが、その青写真を描いたのは、賃貸不動産仲介大手・APAMAN(以下アパマン)の大村浩次社長だった。
大村社長は以前から「わらび座」のファンであり、自ら支援を申し出たという。
大村社長はわらび座の窮状を知り、今年3月、県内外の関係者で構成する「わらび座支援協議会」(会長=三浦廣巳・秋田商工会議所会頭)が発足させた。協議会事務局議長に大村社長、秋田県出身の佐々木毅・元東大総長、脚本家の内館牧子氏らが名誉顧問に就き、支援金の協力を呼びかけた。
並行して有料の会員組織を立ち上げ、舞台のオンライン配信を行うなど再建に向けた方策を進めていた。しかし長引くコロナ禍の影響で4月以降も公演や修学旅行のキャンセルが相次ぎ、ホテルの集客も戻らず資金繰りに行き詰まる。結果的に民事再生法の適用を申請する事態に至った。
再生の実務を担うのは大村氏が顧問を務めるアパマングループの「ファビット」(東京)で、スタートアップ企業の支援やコワーキングスペースの斡旋を手がけている。「大村さんから『一緒にやりましょう』と声をかけていただき、大変ありがたかった」と山川氏は振り返る。
大村社長は九州の不動産会社に勤務していた際にわらび座の地方公演を見てファンになり、自身の新婚旅行で秋田県仙北市の本拠地を訪ねた縁があった。大村社長はオンラインメディアの取材に対し、支援の理由を「地方にある大切なものをなくしてはならない」「子どもたちにこのすばらしい劇団を残したかった。伝統文化そのものだと感じています」とコメントしている。
原点に立ち返る
一般社団法人に衣替えをするのは、教育旅行の原点に立ち返り、非営利化することで秋田県内のみならず、全国から幅広く支援を募るためだ。
再建に当たり、法人向けと個人向けの2種類のサポート制度を設けた。法人向けでは作品の協賛金(1億1000万円)、本拠地にある専用劇場の命名権(3300万円)、温泉ホテル命名権(1100万円)、法人年間シート(110万円)、役者スポンサー(1人1カ月11万円)などのほか、映像制作などの共同事業を行うパートナー(年間3000万円)を募集している。
個人向けでは広く寄付金を募るほか、教育旅行など子供たちに向けた活動を支援する「子ども基金」を立ちあげ、法人も対象に月々1口1万~10万円の協賛金プランを設けた。全国からの支援を視野に、価格水準はいずれも「秋田県内の経済水準よりは高めに設定している」(山川氏)。12月中にはクラウドファンディングも立ち上げ、個人から幅広く運営資金を募る予定だ。
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