「監視資本主義」が教えるグーグルの「隠蔽戦略」 「フォードとグーグルの革命」の決定的な違い

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「それはフォード社での何年にもわたる開発の一段階ではあったが、前例はなく、いきなり空から降ってきたもののように思えた。その日の作業が終わらないうちに、すでに一部の技術者は飛躍的なブレークスルーが起きたことに気づいていた」。

それから1年も経たないうちに、工場全体の生産性が上がり、従来の静止式組み立て方法の少なくとも1.5倍、最大では10倍にもなった。その結果、1908年に825ドルで販売されたモデルTは、1924年には、4シリンダー自動車としては記録的に安い260ドルで売られるようになった。

フォードのライン生産方式と同様に、オンライン環境での経済監視ロジックの要素のいくつかは、何年も前から使われていたが、それを知っていたのはコンピュータ黎明期の限られた専門家グループだけだった。

たとえば、1994年にウェブブラウザ企業の草分けであるネットスケープが、「クッキー」と呼ばれるソフトウェア・メカニズムを開発した。それは、ユーザーの情報を保持するためにユーザーのパソコンに保存されるファイルで、サーバとユーザーのパソコンとの間で、情報の行き来や保存を可能にした。

同じく1990年代後半には、「ウェブバグ」と呼ばれる、ユーザーの活動を監視して個人情報を収集するためにウェブページとeメールに埋め込まれる、小さく、大抵は見えないグラフィックの存在が、専門家の間では知られていた。

グーグルが生み出した商業的監視のシンフォニー

これらの専門家は、こうした監視メカニズムがプライバシーに及ぼす潜在的影響を懸念し、少なくともクッキーに関しては、ユーザーを監視しプロファイルするその侵入的な機能を禁止するインターネットポリシーが公式に検討された。

1996年までに、クッキーの機能は、社会秩序に関わる問題として議論されるようになった。1996年から1997年にかけて、連邦取引委員会のワークショップが開かれ、単純な自動化プロトコルを初期設定することでユーザーが個人情報をすべて管理できるようにする、という提案が話し合われた。

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