「監視資本主義」が教えるグーグルの「隠蔽戦略」 「フォードとグーグルの革命」の決定的な違い

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広告主はこの計画に強く反対し、代わりにネット広告サービス業界団体という「自主規制」組織を設立して、政府の規制を回避しようとした。しかし、2000年6月、クリントン政権は、連邦政府のすべてのウェブサイトにおけるクッキーの使用を禁止した。2001年4月までに、クッキーを規制する条項を含む3つの法案が議会に提出された。

グーグルは、このような監視の慣行に新たな命を吹き込んだ。1世紀前にフォード社がライン生産方式に先鞭をつけたように、グーグルの技術者と科学者は、商業的監視のシンフォニーを指揮することになった。

彼らはクッキー、独占的分析、アルゴリズムソフトウェアといった幅広いメカニズムを統合するとともに、新しい市場形態の基盤として、監視と、行動データの一方的な収集に乗り出した。

この発明は、フォードの発明に並ぶほど衝撃的だった。2001年、行動余剰を活用する新しいシステムが試行されるようになると、グーグルの純収益は8600万ドル(前年比400パーセント増)に達し、同社は初めて利益をあげた。

2002年までに、現金は休みなく流れ込むようになり、グーグルの独占的分析と行動余剰の組み合わせが正解だったという決定的証拠になった。収益は跳ね上がり、2002年には3億4700万ドル、2003年には15億ドル、株式を公開した2004年には32億ドルになった。行動余剰の発見は、4年足らずで、3590パーセント増という驚くべき収益増をもたらしたのだ。

フォードの発明とグーグルの発明の違いとは

ここで重要なのは、フォードとグーグルの発明が資本主義にもたらした変化の違いに気づくことだ。フォードの発明は生産に革命をもたらした。一方、グーグルの発明は抽出に革命をもたらし、監視資本主義の第1の経済的な要求である「抽出要求」を確立した。

抽出要求は、原材料の供給がつねに拡大されなければならないことを意味する。産業資本主義は、低価格と高い処理能力を実現するために、生産における「規模の経済」を必要とした。対照的に監視資本主義は、行動余剰の抽出において規模の経済を必要としたのだ。

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