ヤフーがグーグルの検索エンジンを採用、日本でもヤフー天下の終わりの始まりか

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 ヤフーの井上雅博社長は「googleとbingで優劣をはっきり付けられるものではない。技術面、経済面などを総合的に検討した結果としか言いようがない」とライバルを選択した理由を説明する。検索エンジンの利用料など費用的な面では「現在とほとんど同じ」(井上社長)と言うが、「現時点では、マイクロソフト側で日本語を扱うサービスの準備が十分ではない。この点ではグーグルが一歩先んじている」とも語る。
 
 マイクロソフトのbingは、7月13日に日本語版を正式にスタートさせたところ。しかし、検索の精度もさることながら、収益源となる検索連動広告のシステムでヤフーを満足させるような水準にはなっていないようだ。
 
 ヤフーでは「年内に検索エンジンをヤフーに切り替えたい。広告配信システムはクライアントへの説明等があるのでその後になる」(井上社長)と言う。
 
 ヤフーがグーグルのシステムを採用することで、ことワード検索とそれに連動する広告表示ではヤフーとグーグルに差はなくなることになる。ヤフーは「検索結果は、ワード検索の結果表示だけでなく、ヤフーの独自サービス内での結果表示も行っており、サービスがグーグルと同じになることはない。引き続き独自のサービスとしてグーグルと競争する」(井上社長)と言う。
 
 とはいえ、核となるワード検索は同じ結果に、広告はそれぞれがクライアントを集めるため表示される広告は違うが、上位は似たようなものが表示されることになる。いまのところYSTとグーグルの検索結果・広告表示はかなり異なっており、それに利用者が慣れている面がある。それが、両者とも同じとなれば、ヤフーの利用者がグーグルに乗り換えないとはいえない。もちろん逆もあるが、検索エンジンの技術を握っているのはグーグルであり、主導権はあくまでグーグルだ。
 
 確かに、日本のヤフーは独自に検索エンジンを開発したことはなく、一貫して、日本のgooやグーグル、米ヤフーと、検索エンジンを外部に依存してきた。しかし、それでも国内では圧倒的なトップ総合ネットサービスの地位をキープしている。その意味では検索エンジンがどこであれさほど意味はないという見方もできる。
 
 だが、ネット広告では検索連動広告がバナー広告をしのいで主役となり、検索も単純なテキストから画像、動画などの複合検索へと広がり、検索エンジンの重要性は増すばかりだ。かつて外部に依存していたころのネット黎明期とは、その重要度が違う。
 
 中国など政治的な要因が絡む市場を除けば、グーグルが検索市場で後塵を拝す数少ない主要市場であった日本。しかしその市場でもグーグルはついに独占的地位を確保することになった。ヤフーの日本市場での地位は一朝一夕には揺らがないだろうが、その影響力は確実にグーグルに侵食されていくことになりそうだ。

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