世界企業が測った「スマホ広告」本当の効果 ユニリーバの独自調査で何がわかったのか

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期間は1カ月で約600万のユーザーを対象に広告を打った計算となります。結果として、1000人程度の方にアンケート回答してもらいました。バナー広告、動画広告について、広告の大きさとか出し方を変えてみて、それぞれ効果がどう変わるのかを知りたかったのです。

――わかったことは?

動画広告は結構効き目がありました。一方で、小さなバナー型の広告はほとんど効果がありませんでした。バナー広告は多少サイズが大きかったとしても、あまりいい結果が出ませんでした。動画もバナーも同じコンセプトで、原則は同じスタッフや素材で作っているにもかかわらず、です。

やはり、画面の中での占有率が高く、動いているもののほうがブランドは認知されるようです。モバイル広告でそもそもブランド認知できるのかという疑問がありましたが、結果を見るとそれなりの効果はあるようです。

テレビで同じ製品のCMを見た人の場合、相乗効果も見受けられました。逆に言うと、テレビで何度も同じ広告を出すより、モバイル広告も同時展開するといったメディアミックスのほうが、ブランドの認知は高くなると感じました。

「CTRが高い=よい広告」ではない

――今後、モバイル広告は動画に力点を置く?

そうなります。情報量が多いほうが伝わる。動画には映像だけでなくて音声もある。テレビで育った世代には、スマホの画面は小さく感じますが、若い世代はマルチスクリーンに慣れています。

同じように広告を出している企業の皆さんが、同じように考えているでしょう。ただ、動画広告の流し方はいろいろあり、細かな違いを出していくことになると思います。

――スマホ広告も含めたネット広告の場合、効果を測る指標としてCTR(クリック・スルー・レート=表示された広告がどれだけクリックされたかの割合)があります。

これまで技術的な問題があってできなかったことが解決したので、今回の調査が可能になりました。5年前ならば、CTRで見るしかありませんでした。しかし、ユニリーバの商材は広告がクリックされたかどうかを測っても、あまり意味がありません。広告を見た後に店頭へ行ってもらって手に取ってもらうというのが、マーケティングやブランディングの主眼にあるからです。

これまでのテレビ広告はそういう趣旨に沿ってやっていましたが、これはデジタルの世界になっても変わりません。CTRが高ければよい広告と言われたこともありましたが、それを今回の結果も踏まえたうえでよく検証してみると、どうやら違うようです。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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