日立、アルストムから「高速車両技術」を買う理由 元ボンバルディアの車両、残る部分は中国へ?
今回日立レールが取得したのは「V300 ゼフィロ」と称するヨーロッパ市場向けの専用プラットフォームだ。国際鉄道連合(UIC)の規格に適合し、TSI(Technical Specifications for Interoperability/相互運用性の技術仕様)にも準拠している。営業最高速度は時速360km(現在は300km)、設計最高速度は400kmで、いずれもヨーロッパの営業用高速列車では最速を誇る。
同社の前身であるアンサルドブレダが、このV300ゼフィロプラットフォームをベースに造ったのが、現在イタリア国内の高速列車「フレッチャロッサ1000」で運用されているETR400型車両だ。
同車両は、アンサルドブレダが日立に買収された後は、新生日立レールが契約を引き継いで製造している。まずイタリア国内向けに8両編成50本(400両)が製造され、これらは現在イタリア鉄道の列車運行会社、トレニタリア(Trenitalia)によって運用中だ。同社は2021年12月18日からフランスへの乗り入れを開始、またスペインへも2022年中に高速列車事業へ参入する予定となっていることから、追加分としてフランス乗り入れ用8両編成14本(112両)、スペイン向け8両編成23本(184両)の製造を進めている。
アルストムは、既存のトレニタリアとILSA(スペインの高速列車運行事業者)向け車両契約における義務は継続して履行するとしている。
既定路線だった「ゼフィロ」売却
今回のゼフィロプラットフォーム売却は、アルストムとボンバルディアの合併が決まった段階で、すでに決定事項となっていた。
以前、アルストムはドイツのシーメンスとの合併を画策、実現直前まで話が進んでいたが「市場を独占する恐れがある」として欧州委員会が認めず、この話は破談となってしまった(2019年4月6日付けの記事を参照)。その理由は、両社が保有する製品の中にジャンルが被るものがあり、市場の寡占を防ぐためにどちらかが保有する資産を売却することが求められていたものの、それが不十分であったことだ。
アルストムの保有するTGVとシーメンスの保有するICEは、いずれも世界の高速列車市場の中心的な存在で、他国へも多く輸出されている看板商品だ。1つの会社がどちらも保有するとなれば、市場を独占する可能性があることは明白であり、これが欧州委員会に待ったをかけられた理由だ。
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