日立、アルストムから「高速車両技術」を買う理由 元ボンバルディアの車両、残る部分は中国へ?

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ところが、この欧州委員会の横槍に対して両社の出した回答は、法の抜け穴を突いたような曖昧な内容に終始した。ついに欧州委員会は首を縦に振ることなく、合併話そのものに終止符が打たれる結末となった。

CAFへ売却が決まったアルストムのコラディア・ポリヴァレント(筆者撮影)
同じくCAFに売却されたタレント3。数年前から実施されている承認テストを今も通過できず、オーストリア鉄道からは一部注文をキャンセルされている(筆者撮影)

アルストムとボンバルディアの合併では同じ轍を踏まないよう、両社は可能な限り指摘を受けそうな資産の売却に努めた。連接式車両のコラディア・ポリヴァレント(元アルストム)とタレント3(元ボンバルディア)は数社が興味を示していたが、2021年11月24日にどちらもスペインのCAFが取得したと発表した。

高速列車に関しては、TGVとゼフィロが重複してしまうことになるが、アルストムが1970年代から脈々と受け継いできたTGVの技術を捨てるわけがなく、その結果ゼフィロプラットフォームが売り出されることになった。日立によると、V300プラットフォームの取得は、今後所定の手続きや従業員代表との協議と関連当局の承認を受けた後、2022年前半に完了する見通しとのことだ。

残る部分は中国メーカーの手に?

ところで、今回の売却に関して気になる点は、ゼフィロプラットフォームのうち中国で採用されていた「V250」と「V380」の今後だ。日立に確認したところ、今回の取得はV300プラットフォームのみで、V250、V380の2つは含まれない。

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売却は欧州委員会からの指示を受けての動きであり、V250やV380も売却の対象となるはずだが、日立が取得していないとなると、中国中車青島四方機車車両に引き渡されるということも考えられる。V250を含むゼフィロプラットフォームはスウェーデン向けの車両にも採用されているが、「ZEFIRO Express(ゼフィロエクスプレス)」と称する派生型は、中国で車体を製造した後、ヨーロッパへ輸送して各種艤装を行うという工程になっている。

もしかしたら、いずれヨーロッパ向けの一部の車両も、中国で製造された後に輸送され、最終組み立てだけをヨーロッパの工場で行う、という時代が来るかもしれない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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