脱アナログ「保育園」が本気で取組み起きた大変化 温かみがあるから手書きが好きの声もあるが…
コドモンの小池社長によると、保護者からも「アプリなら通勤中に連絡帳入力ができる」と好評のようだ。
また、「今まで降園時に連絡帳を返すには、午睡時間に記入を終えなければならず、午睡後の活動について記録するのが難しかった。ですが、アプリなら園児の降園後でも、その日のうちに入力できればいいので、午後の活動内容も連絡帳に残せるようになりました」(小池氏)と、CoDMONを使うメリットについて話した。
コロナ禍により導入への追い風も吹いた。CoDMONは「11月時点で9000超の施設が導入、この1年間で3000施設ほど増加しました」(小池氏)。休園になっても保護者とコミュニケーションを図れる体制や、保育士が出勤できなくても事務作業ができる体制を作っておきたいというニーズがあったという。
行政も率先して保育士業務の見直しが必要
一方、明日葉園の宇佐美園長に保育ICTシステムの今後の課題について尋ねると、監査書類の作成に関わる課題が挙がった。
保育所指導監査は、児童福祉法に基づき、都道府県・政令指定都市・中核市が年1回以上の実地検査(企業主導型保育施設については、児童育成協会による年1回以上の立ち入り調査)を行うものだ。監査にあたっては、出欠簿や保育日誌、保護者向けのお便り、連絡帳など大量の書類準備や、監査に対応する人員の確保も必要となる。
「例えば、午睡チェック時の室温や湿度などの情報は、自治体によっては監査で必要な場合があります。現行のCoDMONでは、午睡チェックの項目に室温・湿度の入力箇所がないので、監査時は、室温や湿度を記入した別の記録と一緒に提示する必要がある。必要に応じて入力項目をカスタマイズできれば便利だと感じています」(宇佐美園長)
これに対し、小池氏は「監査項目は自治体ごとに異なり、しかも数年で変更されることも多い。全自治体の監査項目を年度ごとに調べて、園によってカスタマイズできるシステムを作るより、園にとって必要な情報を出しやすくすることがわれわれの役目だと考えています」と言う。
筆者も実際にいくつかの自治体の監査項目を調べてみたが、必須項目がわかりづらいうえ、自治体ごとに少しずつ監査項目が異なっていた。確かに、全自治体の監査項目を毎年調べ、変更されるたびにシステムに反映するのは現実的ではない。
今回の取材で、保育に関わる人たちが口を揃えて言ったのが、「人がやらなくてもいい業務の時間を、少しでも子どもと向き合う時間にしたい」ということだった。
保育ICTシステムの発展で、保育士の「人がやらなくてもよい業務」は軽減されつつある。しかしながら、煩雑な監査項目など、保育ICTシステムだけでは解決できない部分もあるのが現状だ。
北から南まで気候も環境も異なる日本で、地域ごとにチェックすべき項目が多少異なるのは致し方なく、また子どもの安全のためのチェック項目であることは十分理解できる。しかし、基本となる監査項目については、全国で統一できるのではないだろうか。そうすれば監査に合ったシステムを作ることができ、保育士の書類作成など業務負担の軽減につながる。
そのためには行政が率先して、保育士の業務を見直していかなければならない。それが結果的に保育の質を高め、子どもたちの環境、そして未来をよりよくすることにつながるのではないだろうか。
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