脱アナログ「保育園」が本気で取組み起きた大変化 温かみがあるから手書きが好きの声もあるが…

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多くの業務を抱えたまま、子どもたちと午後の活動を行えば、もう降園時間だ。

都内に住む保育士は、「お便りを紙配布する場合、原本を作って印刷し、全員分折りたたんで連絡帳に挟む、という一連の作業だけで相当な時間がかかります。勤務時間内に終わらなかった業務は、持ち帰って自宅で作業することもあります」と話す。

連絡帳のイメージ。赤ラインを引いてあるところが先生からのコメント。全員分手書きとなるとかなり大変だ(編集部撮影)

連絡帳やクラス便りを手書きしている保育士のなかには、「大変だけど、温かみがあるから手書きのほうが好き」という人もいる。筆者の周りの保護者も、「手書きで書いてもらった連絡帳を読むと嬉しい」と話してくれた。

連絡帳を手書きでやり取りするのもさまざまな利点がある。しかし、保育士が多くの業務を抱えるなか、園児の成長と向き合うこと以外の業務や時間については、もっと選択肢があってもよいのではないだろうか。

全園に保育ICTを導入した園の変化

多忙な保育士たちの事務雑務を改善するため、出欠連絡や連絡帳の機能を備えた保育ICTシステムを導入した保育園がある。あしたばマインドが運営する、明日葉保育園だ。

同園では、今年度より全20園で「CoDMON(コドモン)」という保育ICTシステムを導入した。CoDMONは、登降園時間の管理機能をはじめ、活動記録や指導案の作成機能を備えた保育ICTシステムで、アプリ上で出欠連絡や連絡帳のやりとりが可能だ。

コドモンの小池義則社長によると、「現在、全国にある保育所などはおよそ4万園で、そのうち何らかの保育ICTシステムを導入しているのは35%(1万4000園)程度。『CoDMON』を導入している施設は、11月時点で9000超」だと言う。

システムを導入して、保育士の業務はどう変わったのだろうか。明日葉保育園元住吉園の宇佐美亜紀園長に聞いた。

すき間時間に園児の様子を記録する保育士。「作業に集中しすぎないよう、1文入力したら子どもたちの様子を見るなど、工夫して使っている」とのことだ(写真:あしたばマインド)

「当園では1クラスに1台iPadを導入し、午睡などのすき間時間を有効活用して事務作業を進められるようになりました。従来の午睡チェックでは、園児の就寝中の姿勢を手書きしていましたが、アプリなら体の向きをワンタッチで選択するだけで記録できます。手早く記録できるので、園児の様子を見ながらほかの事務作業も進められるうえ、起きた子の対応もすぐにできるようになりました」

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