ただ、このデータを元に「ほら、やっぱり、動画を見るだけ、聞くだけの学習は効果がないんだ!」という結論に結びつけるのは早計のようです。
きれいに並び、なんとなく納得感ある数字ですが、実はこの「ラーニングピラミッド」がまったく根拠のないデータであることが最近わかってきました。
「学習法の優劣」ではなく「組み合わせた学習」が大切
このピラミッドはエドガー・デールという教育者が1946年に発表した「経験の三角錐」モデルを原型としており、データの出典はNational Training Laboratories(アメリカ国立訓練研究所)とされています。
しかし、実はこのデータを裏付ける検証結果が、どこを探しても出てきていません。多くの研究者がその真偽を確かめるために検証した結果、「ラーニングピラミッドは単なる神話」「ゾンビ学習理論」であることがわかったのです。
2018年に発表されたこの論文でも、「実証研究に基づかず、認知心理学的にも矛盾した結果」であると結論づけられています。
最近の科学的な検証結果としては、「学習法に優劣の序列があるわけではなく、『組み合わせて学習すること』が大切なのだ」というのが定説のようです。
つまり、「単に動画を見るだけ」ではなく、「メモをとる」「反復練習をする」「実践する」「教える」といった「能動的な学び」が組み合わさることにより、効果が飛躍的に高まるということ。
一方、日本人の学びは「見るだけ」「聞くだけ」「覚えるだけ」というものが圧倒的に多い気がします。たとえば、次のようなことが日常的に起こっているわけです。
●「視察旅行しただけ」で、仕事した気になる
●「研修で動画を見ただけ、聞いただけ」で、学んだ気になる
●「授業に出て話を聞いただけ」で、学んだと勘違いする
●「一方的にしゃべるだけの講義をしただけ」で、相手が理解したと勘違いする
海外で学んだ経験のある人なら誰でも、「だらだらと、教師が一方的にレクチャーをし、生徒はノートをとるだけ」といった学びが、ほとんど身にはならないことを実感するのではないでしょうか。
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