中国の「アフガニスタン接近」は終わりの始まりだ アフガニスタンが簡単に統治できない事情

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アフガニスタンにおいて、タリバン、アルカイダはいわば「ごろつき集団」と言って差し支えない。それらの勢力が地域を支配している。いわばヤクザのシマに行政機能がついているようなもの。元タリバンのアルカイダもいれば、アルカイダからIS(イスラム国)に、タリバンからISに移った者もいる。ヤクザのシマを渡り歩く人が無数に存在するということだ。

ガニ政権とタリバンは決して喧嘩をしているわけではなく、ガニ政権にもタリバンから複数のメンバーが入っていた。

看板を簡単に掛け替えるテロ組織

彼らは看板を簡単に掛け替える。「東京渡邊組系○○組」「神戸渡邊組系○○組」のように、地域ごとに組が変わり、それぞれにリーダーが存在する。各地域のリーダー次第で、タリバンだったのがアルカイダに変わったりするなど変幻自在だ。

タリバンよりも強硬なイスラム原理主義を貫くのがアルカイダ。しかし、このアルカイダも、もともとCIAが育てた傭兵組織だったという経緯がある。1979年のソ連のアフガン侵攻の際、CIAがゲリラ部隊として育てたのだ。最近はISIS-K(イスラム国ホラサン)という名前をよく聞くが、これもほとんどのメンバーはタリバンで、わかりやすく言えば「ISのフランチャイジー」である。

イスラム国は、世界中にフランチャイザーとして「看板」を売っている。要は、大手コンビニのようにフランチャイズ展開しているのだ。フランチャイジーの個々は、タリバンだったりアルカイダだったりするような集合体によって、アフガニスタンという国が形作られている。こういう地域の実態をわれわれ日本人の感覚で類推できるはずがない。

ちなみに、アフガニスタンにおける正規軍=アメリカ軍である。ただし、アメリカ軍も現地で傭兵を雇っており、それがタリバンの場合もある。CIAの現地の工作員も、協力者もすべて現地民だ。タリバンやISやガニ政権の中に入り込まないと情報が取れないから当然である。CIAのエージェントとしてアメリカからトム・クルーズが潜入しているわけではない。

アメリカは20年にわたり、アフガニスタンのすべての武装勢力に工作員をインプラントしているわけだが、じつはこれにロシアの工作員も入っており、ダブルエージェント、トリプルエージェントも存在する。いったい、誰がどの所属で、どこに忠誠を尽くしているのか外部にはまったくわからない混沌状況である。

中国の中央アジア進出に話を戻そう。アメリカ、ロシアだけでなく、中国までがアフガニスタンの支援勢力として加わって、混沌はさらに極まる。中国にとってアフガニスタンは、一帯一路を進めるうえで是が非でも影響力を及ぼしたい地域である。しかし、中国の夢は水泡に帰すであろう。

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