中国の「アフガニスタン接近」は終わりの始まりだ アフガニスタンが簡単に統治できない事情
2021年8月、アメリカ軍のアフガニスタンからの撤退が完了。20年にわたる軍事統治が終わりを告げた。代わって実権を握ったイスラム主義組織タリバンに対する世界の目は厳しい。そこに忍び寄るのが中国の影。混沌化する中東情勢だが、2022年以降どうなるか。本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2022-23』より、今後の中東リスクについてたっぷりと解説する。
オバマ政権時からの「中東への無策」
2021年を代表する国際情勢のトピックは、アフガニスタンのガニ政権の崩壊、タリバンによる全土掌握だろう。
バイデン大統領は公約に外交戦略を明示しなかった。とくにアフガニスタンを含む中央アジアまで含めた中東戦略に対して、まったくと言っていいほど言及していなかったのは、驚きだ。バイデン政権は、その前の民主党政権であるオバマ政権時に締結したイランとの核合意、そしてキューバ問題にも「答え」を出してこなかった。
結局のところ、オバマ政権時からの「中東への無策」が、今回のアフガン問題に直結したと言える。オバマ政権は2016年末までにアフガニスタンからの撤退を進める方針を取っていたが、どのような形で撤退をするのか、そのためにどういうプロセスを取るのかの具体案を出さなかった。
トランプ政権になってからタリバンとの和平協定を結び、安定したアフガニスタンを構築する前提で段階的な撤退協議を進めていった。しかし、トランプが大統領選で敗れた後、タリバン側とは事実上、没交渉になった。バイデン政権は9・11に合わせて撤退だけを決め、その具体的な交渉を怠ってきたと言われている。
結局、タリバンは中国に接近した。2021年7月28日、王毅外相とタリバンの代表者が会って中国と和平協定を結び、タリバン側が中国から支援を受ける確約を取った時点で、ドミノ倒しのように各都市がタリバンの支配下に入り、結果的に8月15日にはカブールまで陥落してしまった。
こうした経緯のため、共和党やトランプ前大統領、議会の一部勢力が非常に強い口調でバイデン政権のアフガンでの失敗を批判している。
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