中国の「アフガニスタン接近」は終わりの始まりだ アフガニスタンが簡単に統治できない事情

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これは中央アジアの問題だけにとどまらない。アフガニスタンがタリバンの勢力下に入れば、イスラエルにも危機は及ぶ。直接的にイスラエルに危害を加えかねないイラン問題にまでつながってくる。

では、なぜ中国はアフガニスタンに接近するのか。それは、中国の外交戦略上きわめて重要なエリアと捉えているからにほかならないわけだが、その裏には大陸と島国、アイランドパワーとシーパワーの概念に違いがあるのだ。

両者は価値観からものの見方までまったく異なる。法律でも英米法と大陸法(主に独仏)に大きく分けられるのが好例だ。もっとも、島国国家の日本は、大日本帝国憲法制定時には大陸法を導入したが、それは欽定憲法の範とするのにドイツ(プロイセン)の憲法が都合よかったという事情がある。

中国とは「国」の概念が異なる?

アフガニスタンは中東ではなくて中央アジアに属する。中央アジア、中東のアラブ諸国にイランを含むイスラム世界、北アフリカのイスラム圏までを含めた地域には、われわれ日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど海洋国家群が意識する「国境」という概念がない。

海という自然境によって国家が構築されている日本やアメリカに対して、大陸国家では(山や川、湖の場合もあるが)基本的にははっきりとした国境線がなく、政治的・軍事的バランスで人為的に「国境」が決まる。

さらに中東・中央アジアの平原地帯、高原地帯は、城壁都市が点在しているのみで、日本のような都市構造がないからだ。砂漠の中に街が点在している状態で、周辺に農村もなければ、草木すら生えておらず、都市と都市を結ぶ生命の連続がない。人びとは砂漠の民であり農耕民族ではない(ヨーロッパになると農耕民族的要素が少し強くなってきて、多少、風景は変わってくる)。

そのような地域における「国」という概念が、われわれと同一であるはずがない。

アフガニスタンは多民族、多宗教、多文化国家である。民族構成で最も多いパシュトゥーン人でも全体の42%に過ぎない。それ以外にもタジク人、ウズベク人などが民族ごとに点在している構造体になっている。まるでモザイクのような国家だ。これはほかの中東地域もよく似ているけれども、なかでも人種、宗教すべてのるつぼと言われるアフガニスタンでは、統一性が何もない。

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