創業者たちが大手テック企業を「去り始めた」事情 ジャック・ドーシーはツイッターCEOを退任
しかしこのことは、テック業界の巨人たちにとっての楽しみがほとんどなくなってしまったことも示唆する。巨大テック企業の創業者たちは今、自らが築き上げた帝国の管理にうんざりしている。デマやヘイトスピーチへの対応など政治的な重荷は増える一方だが、こうした問題に簡単な解決法は見当たらない。
こうした状況で、古いものを修正するより新しいものを生み出すことに興奮を覚えるのがテック業界の起業家というものである。というわけで、彼らは帝国の管理を他人に任せ、新たなフロンティアを求めて次々と旅立つようになった。
窮屈でダサくなった巨大テック企業
ドーシーの次なるフロンティアはどうやらはっきりしている。彼はビットコインに夢中で(自身のツイッタープロフィールには「ビットコイン」としか書かれていない)、暗号通貨と分散型ウェブについて話すときの熱い語り口は、かつてツイッターに向けられていた熱気を彷彿とさせる。
「私の人生でこれ以上、重要な仕事はないと思う。世界中の人々にこれほど力を与えられるものはないだろう」。6月にマイアミで開催されたビットコイン関連のイベントで、ドーシーはそう語っている。
ドーシーは、予言者風のあごひげと風変わりな健康法によってシリコンバレーの教祖のような存在となったが、最近では暗号通貨のインフルエンサーにもなっている。ビットコインの支持者らはドーシーの退任を喜んだ。
ドーシーが新たに手にした自由な時間を使って、ビットコインの大義を守る戦いに乗り出すと考えたためだ(もっとも、ドーシーはすでにスクエアで分散型金融ビジネスの構築に踏み出しており、そのスクエアで暗号通貨プロジェクトを継続する考えたほうが妥当だとは思うが)。
ドーシーにコメントを求めたが返答はなかった。そのため退任の理由を断定することはできないが、創業から15年以上が経つツイッターに落ちついていられなくなった理由は簡単に想像がつく。
ドーシーがキャリアを積んだのは、2000年代後半から2010年代前半にかけてのインターネット・ブーム期。世間から注目されるソーシャルメディア・アプリの共同創業者であることは当時、とてもすばらしい仕事だった。