政府専門家会議メンバーが語るオミクロン対処法 岡部信彦氏「今慌てて新しいものを求める必要なし」

✎ 1〜 ✎ 201 ✎ 202 ✎ 203 ✎ 最新
拡大
縮小

――内閣官房参与として今回の外国人の入国禁止をアドバイスしたのか。

まったくかかわっていない。だが、善し悪しはあるが、病気を止める意味ではしょうがないのではないか。公衆衛生学的には本当は全部止めたほうがいいが、そうはいかないのが世の中だ。

今回は止めるというよりも時間を稼ぐという意味合いが強い。それが正解かどうか、あとになってみないとわからないが、そのときどうするのかの問題だ。

水際対策の強化はいろいろな人が言ってきている。だが、水際対策はパーフェクトな方法ではない。ウイルス1匹も漏らさないということではない。本当に入れないのなら鎖国すべきだが、そういうわけにもいかない。

また、水際対策さえやればいいのではなく、入ってきたときに備えて国内での態勢をとる必要がある。いったん国内で感染が広がってきた場合には、水際対策にエネルギーを注ぐのは無駄になっているとの発想の転換も必要だ。

日本に入ってきている可能性も否定はできない

――すでにオミクロン株は日本に入ってきているのか。

幸いまだ2例だが(12月4日時点)、可能性があるかと問われれば、ないとはいえない。最初に見つかったのが南アフリカということだけで、それが世界で1例目の発生かどうかはわからない。

南アフリカだから見つかったのであって、アフリカ全体では検査が行き届いていないところも多く、そこで発生、拡大したものがたまたま南アフリカで見つかったことだって考えられる。そうであれば、アフリカに近いヨーロッパではすでに飛び火して拡大が始まっていて、そのあおりを日本を含むアジアがすでに受けていたことは当然考えられる。

ただし国内では目下、感染者数そのものは少ないことはありがたく、オミクロン株が今ひそかに国内でまん延しているというわけではないと思う。

――重症化しやすいものなのか。

今、陽性で見つかっている人に重症者はいない。それももっと広がってみないとわからない。たまたま今は軽症者、無症状者だけから見つかっているのかもしれず、感染者が多数になれば、どんなに割合は低くても重症者は発生する。それがやはり感染者数はできるだけ抑えなくてはいけないところだ。

ワクチンの効果も考えられる。たまたまこれまで見つかった人はワクチンを受けていて重症度を抑えているだけかも知れない。期待したいが今の段階で結論づけられない。

――感染が広まったこの2年で考え方も検査も変わってきた結果といえるのか。

ウイルスを見ることができることは大きな進歩。先が見えることにつながる。だが科学の進歩は必ずしも安心感につながらない。先が見えることは不安感が先行することもある。

今持っているデータをきちんと分析し、不十分なまま結論とするべきではなく、わかっていることとわからないことをきちんと明らかにし、また理解すべきと思う。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT